前審関与の裁判官が判決言渡期日の延期ならびに弁論再開および証人喚問の決定に関与した違法があつても、その後公判手続が更新され判決の基礎となつた審理ならびにその判決に関与していないときは、判決破棄の理由とならない。
前審関与の裁判官が職務の執行をした場合と判決破棄の要否
旧刑訴法24条,旧刑訴法410条2号,旧刑訴法411条
判旨
第一審判決に関与した裁判官が、控訴審の弁論再開や期日延期等の決定に関与したとしても、その後の公判手続が更新され、当該裁判官が原判決の基礎となる審理や判決に関与せず、かつその際の手続内容が判決に採用されていない場合は、判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
第一審判決に関与した裁判官が、控訴審の附随的決定(弁論再開等)に関与した場合、刑訴法20条7号の除斥事由に抵触し、判決に影響を及ぼす違法となるか。
規範
裁判官が「事件について前審の裁判に関与したとき」(刑訴法20条7号)に該当する場合、その裁判官は職務の執行から除斥される。しかし、除斥事由のある裁判官が手続の一部に関与した場合であっても、その後の公判手続が更新され、かつ当該裁判官が判決の基礎となる審理や判決の宣告に関与しておらず、その関与した手続の結果が判決の証拠として採用されていないときは、当該違法は判決に影響を及ぼさない。
重要事実
第一審判決に関与した裁判官Aが、控訴審において判決言渡期日の延期、弁論再開、および証人喚問の決定に関与した。しかし、その後に公判手続の更新が行われ、原判決の基礎となった第4回公判の審理および第5回公判における判決の宣告にはAは関与していなかった。また、Aが決定に関与した際に訊問された証人の供述記載は、控訴審判決の証拠として採用されていなかった。なお、判決謄本にはAの氏名があったが、原本の署名押印は別人であり誤記と認められた。
あてはめ
裁判官Aは第一審に関与しており、控訴審の審理に関与することは除斥事由に抵触し違法である。しかし、本件ではその後公判手続が更新されており、実質的な審理及び判決の合議・宣告には別の裁判官が関与している。また、Aが関与した証人訊問の結果も判決の基礎とされていない。したがって、形式的な手続関与の違法は存在するものの、判決の内容を左右する実質的な影響を及ぼしたものとはいえない。
結論
控訴審判決に除斥の規定に違反した違法があるとしても、本件の経緯に照らせば判決に影響を及ぼさないことが明白であるため、上告理由は認められない。
実務上の射程
裁判官の除斥事由違反(刑訴法20条7号)があった場合の救済の限界を示す射程を持つ。単に形式的な関与があるだけでなく、それが判決の基礎となる審理や判断に実質的に影響を与えたかどうかが、判決の取消事由(379条、405条等)の成否を分ける判断基準となる。
事件番号: 昭和37(あ)1578 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
控訴審において第一審判決を破棄差戻する旨の判決の審理判決に関与した裁判官が、その事件の再度の控訴審の審理判決に関与しても、刑訴法第二〇条第七号の除斥事由に当らないことは当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第五九号同二八年五月七日第一小法廷決定、刑集七巻五号九四六頁昭和三六年(あ)第一七五六号同年一〇月三一日第三小法廷決定、…
事件番号: 昭和29(あ)4169 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
第一審裁判官が所論仮処分決定をなした裁判官であるということは、同裁判官を被告人に対する本被告事件審判の職務の執行から除斥するものでないことは、刑訴二〇条各号の規定により明らかであると共に、右の一事を以て同裁判官が不公平な裁判をする虞があつたとも断定することはできない。