判旨
賃貸借終了に基づく土地明渡請求において、請求の基礎が所有権ではなく賃貸借契約にある以上、賃貸人が当該土地の所有権を喪失したとしても請求は妨げられない。また、換地予定地の指定がなされたのみでは所有権は喪失せず、依然として使用収益権を有する者の明渡請求は認められる。
問題の所在(論点)
賃貸借終了に基づく土地明渡請求において、賃貸人の所有権喪失の有無が請求の成否に影響を及ぼすか。また、換地予定地の指定により、賃貸人の使用収益権が失われるか。
規範
賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求(土地明渡請求)は、契約関係の終了を原因とする債権的請求権である。したがって、請求の基礎は土地の所有権の有無に依存せず、賃貸借が適法に終了し、かつ賃貸人が対象物件を使用収益させる権限を保持している限りにおいて肯定される。
重要事実
被上告人(賃貸人)は、上告人(賃借人)らに対し、土地賃貸借の終了を原因として土地の明渡しを求めた。これに対し上告人側は、本件土地に特別都市計画法に基づく換地予定地の指定がなされたことを理由に、被上告人が土地の所有権を喪失したと主張して争った。しかし、実際には換地処分の公告まではなされておらず、被上告人は都市計画施行者から、計画の最終決定まで無償で当該土地を使用収益することを許されていた。
あてはめ
本件訴訟は土地の所有権に基づくものではなく、判示賃貸借の終了を原因とする明渡請求である。そのため、上告人が主張する所有権の帰属に関する論旨は、請求の根拠に直接関わらない。また、本件では換地予定地の指定がなされたにとどまり、都市計画法上の換地処分(権利の移転)は完了していないため、被上告人が所有権を喪失した事実は認められない。さらに、被上告人は施行者より無償で継続的な使用収益を許されていることから、明渡を求める正当な権原を有しているといえる。
結論
被上告人の請求は、所有権の有無にかかわらず賃貸借終了に基づく請求として正当であり、土地明渡請求は認められる。
事件番号: 昭和27(オ)1293 / 裁判年月日: 昭和29年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者は、特別都市計画による換地予定地の指定がなされたとしても直ちに土地の所有権を失うものではなく、依然として当該土地の不法占拠者に対して明渡しを請求することができる。 第1 事案の概要:土地所有者である原告が、被告による土地の不法占拠に対し、所有権に基づき当該土地の明渡しを求めた。これに対し…
実務上の射程
賃貸借終了に基づく返還請求と、所有権に基づく物権的請求権の区別を明確にする際に有用な判例である。また、土地区画整理法等における換地予定地の指定段階では、従前の所有者・賃貸人の使用収益権が直ちに消滅しないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)185 / 裁判年月日: 昭和29年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別都市計画法に基づく換地予定地の指定がなされたとしても、換地処分が完了しない限り、従前の所有者は対象土地の所有権を喪失しない。また、施行者から無償で使用収益を許諾されている場合には、その権利に基づき土地を利用できる。 第1 事案の概要:被上告人が所有する土地に対し、特別都市計画法に基づく換地予定…
事件番号: 昭和34(オ)387 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別都市計画法に基づく換地予定地指定処分がなされても、従前の土地所有者は使用収益権を失うにとどまり、所有権自体は喪失しないため、不法占有者に対し所有権に基づく明渡請求をすることができる。 第1 事案の概要:土地所有者である被上告人は、特別都市計画法に基づき、所有する本件土地について換地予定地の指定…
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。