判旨
既判力のない公正証書が債務名義である場合、債務者異議の訴え等において、当該証書に記載された債権の不成立を主張して争うことができる。
問題の所在(論点)
執行証書(公正証書)を債務名義とする強制執行において、債務者は当該証書に記載された債権の不成立(発生原因の欠如等)を理由として異議を主張することができるか。債務名義の既判力の有無と、主張可能な異議事由の範囲が問題となる。
規範
確定判決のような既判力のある債務名義については債権の不成立を主張することは許されないが、既判力のない公正証書が債務名義である場合には、その記載内容である債権の不成立を判断することができる。
重要事実
債権者は、執行証書(公正証書)を債務名義として強制執行を試みた。これに対し、債務者側が当該公正証書に記載された債権の不成立を主張して争った事案である。また、手続過程において、旧民事訴訟法下の異議取下げ看做しの規定の適用可否も問題となった。
あてはめ
本件の債務名義は公正証書であり、確定判決とは異なり既判力を有しない。既判力とは、前訴判決の内容を後訴で争うことを禁ずる効力であるが、公正証書にはこのような効力が認められないため、その内容たる債権自体の存否を裁判所が判断することを妨げる事情はない。したがって、債権の不成立を主張して争うことは当然に可能である。
結論
既判力のない公正証書が債務名義である場合、記載された債権の不成立を判断し得るため、上告人の主張(原判決の違法性)は理由がない。
実務上の射程
民事執行法35条2項の適用に関連する。確定判決を債務名義とする場合は「口頭弁論終結後」の事由に限定されるが、既判力のない債務名義(公正証書や家事審判等)については、成立前の事由(不成立・無効等)も主張可能であることを示す基礎的判例である。
事件番号: 昭和50(オ)918 / 裁判年月日: 昭和51年10月12日 / 結論: 棄却
債務者の代理人が本人としてした作成嘱託及び執行受諾に基づき作成された公正証書は、債務名義としての効力がない。