同順位の根抵当権者の1人が提出した不動産競売事件の申立書の被担保債権及び請求債権の部分における「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載は,これに続けて8億円を超える7件の手形貸付に係る債権が記載されていること,同申立書の添付資料である不動産登記簿謄本には,他の同順位の根抵当権者の各根抵当権が記載されていること,同申立書には被担保債権の一部について根抵当権の実行をする旨の明示の記載がないことなど判示の事実関係の下では,民事執行規則(平成15年最高裁判所規則第22号による改正前のもの)170条4号の「被担保債権の一部について担保権の実行」をする旨及び「その範囲」を示す記載であると解することはできない。
同順位の根抵当権者の1人が提出した不動産競売事件の申立書の被担保債権及び請求債権の部分における「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載が被担保債権の一部について担保権の実行をする趣旨の記載ではないとされた事例
民事執行法180条,民事執行規則(平成15年最高裁判所規則第22号による改正前もの)170条
判旨
配当等強制執行の手続において、債権者が提出した「配当要求書」に記載された債権額が、その根拠となる執行力ある判決等に表示された債権額を超過している場合、その超過部分についての配当処分は法律上の根拠を欠き、違法として取り消されるべきである。
問題の所在(論点)
民事執行法上の配当手続において、債権者が債務名義に表示された額を超える金額を債権額として届け出た場合、当該超過部分について配当を行うことは許されるか。また、そのような配当処分がなされた場合の是正方法が問題となる。
規範
配当手続における配当額の算定は、債権者が提出する債務名義(執行力ある正本)に表示された債権の範囲内で行われなければならない。債権者が提出した書面に記載された金額が債務名義の認める額を超えている場合、その超過部分については配当を受けるべき実体法上および手続法上の根拠を欠くため、当該部分の配当処分は取り消しの対象となる。
重要事実
債権者(被上告人)らは、債務者に対し金銭債権を有しているとして強制執行を申し立て、配当要求書を提出した。しかし、当該配当要求書に記載された債権額は、その根拠として提出された債務名義(本件判決等)により認められる金額を大幅に超過していた。執行裁判所は、この超過分を含めた金額を基準として配当表を作成し、配当処分を行ったため、債務者側がその処分の取消しを求めて執行異議を申し立てた。
あてはめ
本件において、被上告人らが届け出た債権額のうち、約20億円にのぼる部分は、提出された債務名義の記載から導き出される金額を超過している。配当は債務名義に基づく強制実現の手続である以上、債務名義の認める範囲を逸脱した金額を配当することは、執行法の予定しない違法な処分であるといえる。したがって、債務名義に表示された額の範囲内でのみ配当を行うべきであり、これを超える配当表の作成は不当であると解される。
結論
債務名義の範囲を超えた部分に関する配当処分は違法であり、これを取り消した上で、適切な配当額に修正すべきである。よって、超過部分を容認した原審の判断は破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は、配当手続における債権額の確定が債務名義に拘束されることを明示したものである。実務上、配当要求段階で過大な請求がなされた場合でも、裁判所は債務名義を確認し、その範囲内に配当を制限する義務があることを示唆している。答案上は、強制執行の限界や、配当表に対する異議・執行異議の局面で活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)255 / 裁判年月日: 昭和47年6月30日 / 結論: 棄却
不動産の任意競売の申立人は、被担保債権につき、申立書に表示した債権の額に制限されないで、競売代金から配当を受けることができる。