不動産の任意競売の申立人は、被担保債権につき、申立書に表示した債権の額に制限されないで、競売代金から配当を受けることができる。
不動産の任意競売の申立書に表示した債権の額と配当を受けうる金額
競売法24条2項3号,競売法23条2項
判旨
不動産競売の申立てにおいて、申立債権額の表示は被担保債権を特定する足る程度で足り、債権額を限定する意義を有するものではないため、債権者は表示額を超えて配当を受けることができる。
問題の所在(論点)
不動産競売申立書における「申立債権の表示」の法的性質および、表示された債権額が配当受領権の範囲を限定するか。また、異なる債権者の先順位抵当権が設定されている物件を含む場合の一括売却の効力が問題となる。
規範
不動産競売申立てにおける申立債権の表示は、被担保債権がいかなる債権であるかを明らかにするために必要とされるものである。したがって、その表示の程度は当該債権を「特定しうる程度」であれば足り、記載された債権額は配当を受けられる債権額を限定する意義を有するものではない。
重要事実
債権者(被上告人)が不動産(土地4筆)の競売を申し立てる際、競売申立書に被担保債権の額を表示した。その後、実際の競売代金から配当を受けるにあたり、債権者は申立書に記載した債権額を超える額の配当を求めた。これに対し、債務者側(上告人)は、配当額は申立書に表示された債権額に制限されるべきであると主張して争った。また、複数の物件(土地および建物)が一括競売されたか、個別競売が併行されたかの売却条件の効力も争点となった。
あてはめ
競売法(当時)における債権表示の趣旨は債権の特定の点にある。本件において、被上告人が示した債権表示は債権を特定するに足りるものである。記載された債権額は、あくまで手続開始のための表示にすぎず、実体法上の被担保債権の範囲を拘束するものではないため、表示額を超えた配当を受けることは正当である。また、異なる債権者の先順位根抵当権が存在する建物については、一括競売の条件は効力を生じず、土地の一括競売と建物の個別競売が併行されたものと解するのが相当である。
結論
不動産競売申立書の債権額表示によって配当額は制限されない。また、他者の優先権がある物件については一括競売の効力は及ばず、併行した個別競売として処理される。
実務上の射程
抵当権に基づく競売手続において、申立書の記載額と実際の配当要求額が異なる場合の処理基準を示す。債権の特定さえなされていれば、配当段階で実体上の被担保債権全額(優先弁済権の範囲内)を主張できるという実務上の取り扱いを裏付けるものである。
事件番号: 平成15(受)278 / 裁判年月日: 平成17年11月24日 / 結論: 破棄自判
同順位の根抵当権者の1人が提出した不動産競売事件の申立書の被担保債権及び請求債権の部分における「金8億円 但し,債権者が債務者に対して有する下記債権のうち,下記記載の順序にしたがい上記金額に満つるまで。」との記載は,これに続けて8億円を超える7件の手形貸付に係る債権が記載されていること,同申立書の添付資料である不動産登…