任意競売の対象である不動産について登記のある抵当権を有する者は、右抵当権に優先する仮差押の登記がある場合であつても、その被担保債権につき配当要求をすることなしに仮差押債権者と同順位で配当を受けることができる。
仮差押登記後に設定登記がされた抵当権と任意競売手続における配当
民法369条1項,民訴法737条1項,民訴法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)646条,競売法33条2項
判旨
不動産の任意競売において、申立人の権利に劣後する抵当権者は、優先する仮差押登記が存在する場合でも、配当要求なしに順位に応じた配当を受けることができる。
問題の所在(論点)
不動産の任意競売において、(1)競売申立人に劣後し、かつ仮差押債権者に対抗できない後順位抵当権者は、配当要求をしなければ配当を受けられないか。(2)当該抵当権が仮登記であることは、配当を受ける地位に影響を及ぼすか。
規範
不動産の競売手続において、登記上の後順位抵当権者は、配当要求の有無にかかわらず、その順位に従った配当を受ける地位を有する。当該抵当権に優先する仮差押登記が存在し、抵当権者が仮差押債権者に対抗できない場合であっても、それは配当上の優先順位(劣後関係)の問題にすぎず、配当を受ける資格自体を失わせるものではない。また、当該抵当権が仮登記である場合は、配当額を供託することで対応すべきであり、配当手続の対象となること自体は妨げられない。
重要事実
不動産の任意競売手続において、競売申立人の権利よりも登記上後順位にある抵当権が存在した。この抵当権に先立って仮差押登記がなされており、当該抵当権は仮差押債権者に対抗できない関係にあった。さらに、当該抵当権設定登記は本登記ではなく仮登記の状態であった。このような状況下で、当該(仮登記)抵当権者が配当要求をしていない場合に、配当を受ける地位が認められるかが争われた。
あてはめ
任意競売では登記上の利害関係人は当然に把握されるため、後順位抵当権者は配当要求を待たずして順位に応じた配当を受けるべきである。本件において、仮差押債権者との関係で対抗できない事情があるとしても、それは仮差押債権者に対する優先順位の劣後を意味するにとどまり、配当を受ける権利そのものを否定する根拠にはならない。また、仮登記である点については、民事執行上の供託制度によって手続的調整が可能であり、配当の対象から除外すべき理由にはならないといえる。
結論
後順位抵当権者は配当要求がなくても順位に従った配当を受ける地位を有し、優先する仮差押えや仮登記の状態はこれを妨げない。
実務上の射程
民事執行法上の配当受領権者の範囲を画定する際の基礎となる。実務上、抵当権が仮登記であっても、あるいは先立って仮差押えがなされていても、競売手続においては当然に配当の対象として扱うべきであることを示した重要な判断指針である。
事件番号: 昭和42(オ)342 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 破棄差戻
抵当権者が被担保債権を被保全債権として抵当不動産の仮差押をした場合において、仮差押債務者が仮差押解放金を供託して仮差押執行の取消を得たときには、抵当権の効力は、物上代位の規定の趣旨により、右仮差押解放金の取戻請求権に及ぶ。