債権者甲が債務者乙から根抵当権の設定を受けた場合であつても、右の根抵当権につき他人名義で登記を有するにすぎないときは、甲は、乙が丙に対し当該不動産を譲渡し所有権移転登記を了したのちに第三者が当該不動産につき申し立てた不動産競売事件において、右の根抵当権を主張して配当を受けることはできない。
他人名義で根抵当権設定登記を有する債権者が抵当不動産の譲渡後に開始された不動産競売事件において配当を受けることの可否
民法177条,競売法33条2項,民事執行法87条,民事執行法188条
判旨
不動産競売において、第三者の名義で根抵当権登記を経由した実質上の権利者は、特段の事情のない限り、当該不動産の所有権を取得し登記を経由した第三者に対し、自己の根抵当権を対抗して配当を受けることはできない。
問題の所在(論点)
不動産競売の配当手続において、実質上の根抵当権者が、他人名義の登記しかない状態で、当該不動産の所有権を取得し登記を経由した第三者(所有者)に対して根抵当権の優先弁済権を主張(対抗)できるか。民法177条の「第三者」および登記の有効性が問題となる。
規範
1. 不動産競売の配当における債権の順位・優劣は、実体法(民法等)によって決せられる。 2. 同一不動産について相容れない物権を有する当事者間(抵当権者と譲受人)においては、民法177条に基づき、自己の権利を主張するために有効な登記を経由していることを要する。 3. 他人名義の登記は、登記の公示方法としての性質に反するため、特段の事情のない限り、実体上の権利を欠く無効な登記であり、対抗力を有しない。
重要事実
1. 債権者(被上告人)は、債務者Dへの貸付を担保するためE所有の本件土地に根抵当権を設定したが、便宜上、従業員Iの名義で登記を経由した。 2. その後、Eは上告人に対し、本件土地を譲渡担保として譲渡し、上告人側(妻の名義等を経て最終的に上告人)へ所有権移転登記がなされた。 3. 本件土地につき他債権者の申立てにより不動産競売が開始された際、被上告人はIから根抵当権付き債権を譲り受けた旨の書面を提出し、実質的な権利者として配当を求めた。 4. 執行裁判所は被上告人への配当表を作成したが、所有者である上告人がこれに異議を述べ、配当意義の訴えを提起した。
あてはめ
1. 被上告人は根抵当権の設定を受けた者であり、上告人は設定者から所有権を譲り受けた者であるから、両者は同一不動産につき相容れない物権を有する関係にある。 2. 被上告人が上告人に対し、配当において根抵当権を主張するには有効な登記を要するが、被上告人が有する登記は他人(I)の名義である。 3. このような他人名義の登記を実体関係に基づき被上告人の登記と同視することは、登記の公示機能に反し許されない。また、特段の事情がない限り、他人名義の登記は実体上の権利を欠く無効なものである。 4. したがって、被上告人は有効な対抗要件を備えておらず、上告人に対し根抵当権を対抗できない。
結論
被上告人は上告人に対し、本件土地の根抵当権をもって対抗することができず、被上告人への配当は取り消されるべきである。配当金は剰余金として所有者である上告人に交付されるべきである。
実務上の射程
他人名義の登記(いわゆる「他人名義による登記」)の対抗力を否定した重要な判例である。不動産競売手続においても、配当順位等の実体判断は民法177条の対抗問題として処理されることを示している。答案上は、登記名義人と実質的権利者が異なる場合の対抗力の有無や、配当異議の訴えにおける実体法の適用場面で活用すべきである。
事件番号: 昭和54(オ)448 / 裁判年月日: 昭和59年11月16日 / 結論: 棄却
一 保証人と債務者との間に求償権について法定利息と異なる約定利率による遅延損害金を支払う旨の特約がある場合には、代位弁済をした右保証人は、物上保証人及び当該物件の後順位担保権者等の利害関係人に対する関係において、債権者の有していた債権及び担保権につき、右特約に基づく遅延損害金を含む求償権の総額を上限として、これを行使す…