物上保証人に対する不動産競売事件において作成された配当表につき、競売申立てに係る被担保債権の債務者は、右被担保債権その他自己に対.する債権への配当額に変動を生じ得る範囲において、配当異議の訴えを提起することができる。
物上保証人に対する不動産競売事件において作成された配当表につき競売申立てに係る被担保債権の債務者が配当異議の訴えを提起することの許否
民事執行法89条,民事執行法90条,民事執行法188条,民訴法45条,民訴法第2編第1章訴
判旨
物上保証人所有の不動産に対する競売手続において、被担保債権の債務者は民事執行法188条・89条1項・90条1項にいう「債務者」に含まれる。これにより、当該債務者は自己の債務が配当により減少する範囲で、配当異議の申出および配当異議の訴えを提起する原告適格を有する。
問題の所在(論点)
物上保証人が提供した不動産の競売手続において、不動産所有者ではない「被担保債権の債務者」が、民事執行法上の配当異議を申し立て、または配当異議の訴えを提起する原告適格を有するか(同法188条、89条1項、90条1項の「債務者」の解釈)。
規範
不動産担保権実行手続(民事執行法188条)に準用される同法89条1項・90条1項の「債務者」には、不動産の所有者のほか、被担保債権の債務者も含まれる。債務者は、配当による弁済について所有者から求償権を行使される関係にあり、かつ配当の結果により自己の総債務の減少額が変動するという固有の法律上の利害関係を有する。したがって、債務者は被担保債権その他自己の債権者への配当額に変動を生じ得る範囲において、配当異議の申出等を行うことができる。
重要事実
不動産所有者Dは、債務者である上告人の債務を担保するため、本件不動産に抵当権および根抵当権を設定した。その後、抵当権者Eが競売を申し立て、被上告人(国等)が租税債権に基づき交付要求を行った。配当表では、被上告人の租税債権が優先され、上告人の根抵当権に係る被担保債権の一部に配当が及ばなかった。上告人は配当期日に出頭して異議を申し立て、配当異議の訴えを提起したが、原審は上告人が不動産所有者でないことを理由に原告適格を否定し、訴えを却下した。
あてはめ
上告人は競売対象不動産の所有者ではないが、競売申立てに係る抵当権および配当要求がなされた根抵当権の「債務者」である。被上告人の租税債権に優先配当がなされた結果、上告人の根抵当権に係る被担保債権への配当が減少し、上告人の負担すべき残債務額が直接的に増加する関係にある。これは自己の総債務の減少に関わる固有の法律上の利害関係といえる。また、執行法182条が債務者に執行異議を認めている点からも、所有者に準ずる地位を認めるべきである。したがって、上告人は配当額を争う利益を有し、原告適格が認められる。
結論
被担保債権の債務者は民事執行法上の「債務者」に含まれ、配当異議の訴えを提起することができる。本件上告人の訴えを却下した原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
物上保証手続における債務者の地位を確立した重要判例である。答案上では、配当異議の訴えの原告適格が問われた際、「法律上の利害関係」の有無を判断する基準として活用する。特に、被担保債権の消滅や配当順位の争いがある場合に、債務者が求償を免れ、または自己の債務消滅の利益を確保するために本規範を用いる。
事件番号: 昭和58(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和59年12月20日 / 結論: 破棄自判
債権者甲が債務者乙から根抵当権の設定を受けた場合であつても、右の根抵当権につき他人名義で登記を有するにすぎないときは、甲は、乙が丙に対し当該不動産を譲渡し所有権移転登記を了したのちに第三者が当該不動産につき申し立てた不動産競売事件において、右の根抵当権を主張して配当を受けることはできない。