競売申立債権者の抵当権又はその被担保債権が配当期日までに消滅したときは、これをもつて配当異議の訴えの原因とすることができる。
競売申立債権者の抵当権又はその被担保債権の消滅と配当異議の訴えの原因
民事執行法84条4項,民事執行法89条,民事執行法90条,民事執行法183条,民事執行法184条
判旨
不動産競売の配当期日において、債権者や所有者は、抵当権またはその被担保債権が配当期日までに消滅したことを配当異議の訴えの原因とすることができる。
問題の所在(論点)
不動産競売手続において、配当期日より前に被担保債権が弁済供託により消滅したことを、配当異議の訴えの原因とすることができるか。民事執行法183条、184条等の規定が、このような消滅の主張を制限するかが問題となる。
規範
民事執行法は、正当な弁済を実現するため、配当異議の申出および配当異議の訴え(同法90条等)を認めている。同法183条(手続停止文書の制限)や184条(買受人の所有権取得の保護)は、競売手続の円滑な進行や買受人の地位を保護する趣旨であり、当事者間において担保権の消滅を主張することを禁じるものではない。したがって、配当期日までに被担保債権が弁済等により消滅した場合、これを理由として配当異議を申し立てることは当然に認められる。
重要事実
所有者A1の不動産には、被上告人を一番抵当権者、上告人A2を二番抵当権者とする抵当権が設定されていた。被上告人が競売を申し立て、売却許可決定がなされた後、A1は被上告人に対し被担保債権全額の弁済を提供したが受領を拒絶されたため、当該全額を供託した。しかし、執行裁判所は配当期日において、被上告人への配当を含む配当表を作成したため、上告人らは債権消滅を理由に配当異議を申し立て、配当異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件では、所有者A1は被担保債権を弁済する正当な利益を有しており、競売手続が一定の段階に至ったことのみをもって被上告人が弁済受領を拒絶する正当な理由はない。したがって、A1による弁済受領の催告は有効な提供であり、その後の弁済供託によって被上告人の債権は有効に消滅している。民事執行法上の各制限規定は、手続の安定を目的とするにすぎず、実体法上の債権消滅の効果を否定するものではないため、上告人らはこの消滅を配当異議の訴えにおいて主張できる。
結論
被担保債権の消滅を理由とする配当異議の訴えは認められる。本件では、弁済供託により債権が消滅したため、被上告人に対する配当部分を取り消すべきである。
実務上の射程
抵当権の不存在・消滅を理由とする配当異議の可否に関するリーディングケース。民事執行法の「手続の安定」と「実体的な正当性」の調和を示しており、競売が進んだ後(代金納付前等)の弁済であっても、配当表を是正する手段として活用できる。
事件番号: 昭和49(オ)19 / 裁判年月日: 昭和49年12月6日 / 結論: 棄却
抵当権の実行による不動産競売手続において配当表が作成された場合、配当期日に出頭した債務者又は抵当不動産の所有者が債権者の債権に対し異議を申し立て期日に異議が完結しなかつたときは、右債務者又は所有者は、配当表に対する異議の訴を提起することができる。