根抵当権者は、後順位担保権者など配当をうけることのできる第三者がなく、競売代金に余剰が生じた場合においても、極度額を越える部分について、当該競売手続においては、その交付をうけることができない。
後順位担保権者など第三者がいない場合における根抵当権者の配当受領金額
民法398条ノ3第1項,競売法33条2項
判旨
根抵当権の極度額は、第三者に対する優先弁済権の制約であるのみならず、根抵当権者が目的物件に対して有する換価権能の限度を意味する。したがって、後順位担保権者がおらず競売代金に剰余が生じた場合であっても、根抵当権者は極度額を超える部分について交付を受けることができない。
問題の所在(論点)
根抵当権の極度額の定めは、後順位債権者等の第三者との関係における優先弁済の限度額を定めるものにすぎないのか、あるいは根抵当権者が目的物件から回収し得る絶対的な上限(換価権能の限界)を定めるものなのか。
規範
根抵当権における極度額の定めは、単に後順位担保権者ら第三者に対する優先弁済権の制約にとどまらず、根抵当権者が根抵当権の目的物件について有する換価権能の限度を意味する。ゆえに、利息・損害金と元本の総額が極度額を超えない限り、その全部について優先弁済を受けられるが、極度額を超える部分については、たとえ配当を受けるべき第三者がおらず競売代金に余剰が生じた場合であっても、当該競売手続においてその交付を受けることはできない。
重要事実
上告人は、債権極度額を各100万円とする2個の根抵当権(計200万円)を設定していた。その後、被上告人が極度額350万円の根抵当権を設定した。不動産の競売の結果、代金289万円について、裁判所は上告人に計200万円、被上告人に約84万円を配当する代金交付表を作成した。上告人は、自身の被担保債権のうち極度額を超える部分についても交付を受けるべく、配当異議を申し立てた。
あてはめ
根抵当権の極度額が換価権能の限度を画するものである以上、本件において上告人が根抵当権に基づき優先弁済を受けられる上限は、登記された極度額の合計である200万円に限定される。上告人は既に200万円の配当を受けており、これを超えて競売代金の交付を受ける権利は認められない。そうすると、仮に後順位者である被上告人への配当額が不当であったとしても、上告人がその分を自己の配当に充てられる余地はない。
結論
根抵当権者は、極度額を超えて競売代金の交付を受けることはできない。したがって、極度額に達する配当を既に受けている上告人は、他の債権者への配当について異議を申し立てる利益を有しない。
実務上の射程
根抵当権者が極度額を超えて債権を回収するには、債務者名義の他財産を差し押さえる等の一般債権者としての手続が必要であり、当該根抵当権自体の実行手続内では極度額が絶対的上限となる。民法398条の3第1項の解釈として、配当異議の訴えの原告適格(利益)を否定する文脈で活用すべき判例である。
事件番号: 昭和41(オ)255 / 裁判年月日: 昭和47年6月30日 / 結論: 棄却
不動産の任意競売の申立人は、被担保債権につき、申立書に表示した債権の額に制限されないで、競売代金から配当を受けることができる。