配当異議の訴えにおいて,競売申立書における被担保債権の記載が錯誤,誤記等に基づくものであること及び真実の被担保債権の額が立証されたときは,真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることができる。
配当異議の訴えにおいて競売申立書の被担保債権の記載と異なる真実の権利関係に即した配当表への変更を求めるための要件
民事執行法90条 ,民事執行法188条,民事執行規則60条,民事執行規則170条2号,民事執行規則170条4号,民事執行規則173条1項
判旨
不動産競売の申立書に被担保債権の一部の記載を欠いた場合でも、それが錯誤や誤記等に基づき、真実の債権額が立証されれば、配当異議の訴えにおいて真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることができる。競売申立書の記載のみをもって直ちに優先弁済請求権を放棄したものとはみなされない。
問題の所在(論点)
不動産競売の申立書に被担保債権(附帯債権)の記載を漏らした場合、配当手続において、申立書の記載に拘束され、真実の債権額に基づいた配当を求めることはできないか。民事執行規則170条2号・4号の記載の拘束力が問題となる。
規範
民事執行規則170条2号・4号が被担保債権の記載を求める趣旨は、競売手続の安定確保にある。一部実行の申立てをした者が債権拡張を制限されるのは、手続関係者に対する禁反言の要請に基づくものであり、実体法上の優先弁済請求権そのものを喪失させるものではない。したがって、申立書の不備が錯誤や誤記等に基づくことが立証されれば、実体法上の権利に従った配当を主張できる。
重要事実
根抵当権者である上告人は、極度額8000万円の本件根抵当権に基づき競売を申し立てた。申立書には元金6000万円のみを記載し、利息・損害金の記載を欠いていた。その後、上告人は債権計算書において利息・損害金を合算した配当を求めたが、執行裁判所は申立書の金額に基づき、残余金を後順位配当権者(被上告人)に配当する配当表を作成した。これに対し、上告人が配当異議の訴えを提起した事案である。
あてはめ
本件において、上告人の申立書には元本の全額が記載されていたが、附帯債権の記載がなかった。しかし、この記載のみから直ちに、上告人が極度額の範囲内にある附帯債権の優先弁済請求権を放棄し、元本のみの実行を意図したと断定することはできない。錯誤や誤記等の事情があれば、禁反言の理は妥当せず、実体的な権利関係が優先されるべきである。したがって、原審は申立書の記載から直ちに請求を排斥せず、錯誤等の有無を審理すべきであった。
結論
競売申立書の記載が錯誤・誤記等に基づき、真実の債権額が立証されたときは、真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることができる。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
手続の安定よりも実体法上の優先弁済権の保護を重視した判例である。答案上は、競売申立の記載の不備が配当異議の訴えという実体法上の争いにおいて、どこまで拘束力を持つかという文脈で活用する。特に、禁反言の観点から、申立債権者の帰責性と相手方の信頼を比較考量する際の判断枠組みとして有用である。
事件番号: 平成13(受)1567 / 裁判年月日: 平成14年10月22日 / 結論: 破棄自判
共同抵当の目的となった数個の不動産の代価を同時に配当すべき場合に,1個の不動産上にその共同抵当に係る抵当権と同順位の抵当権が存するときは,まず,当該1個の不動産の価額を同順位の各抵当権の被担保債権額の割合に従って案分し,次に,共同抵当権者への案分額及びその余の不動産の価額に準じて共同抵当の被担保債権の負担を分けるべきで…
事件番号: 平成2(オ)1128 / 裁判年月日: 平成6年7月14日 / 結論: 破棄自判
配当表に債権者として記載されていない者は、配当異議の訴えの原告適格を有しない。