判旨
任意代理人が復代理人を選任する際、民法104条にいう「やむを得ない事由があるとき」の判断にあたっては、原審が認定した具体的な事実関係に照らして判断すべきである。本件では、上告人の妻による復代理人の選任は同条の要件を満たすと判断された。
問題の所在(論点)
任意代理人が復代理人を選任する要件である民法104条の「やむを得ない事由」が、本件のような親族間(妻)による選任において認められるか。
規範
任意代理人が本人に代わって復代理人を選任するためには、本人の許諾があるか、または「やむを得ない事由があるとき」であることを要する(民法104条)。ここにいう「やむを得ない事由」とは、代理人が自ら代理権を行使することが困難な客観的事態が存在し、復代理人によって事務を処理させることが、本人の利益保護や事務処理の継続性の観点から相当と認められる場合を指す。
重要事実
上告人の妻が任意代理人として行為するにあたり、自らではなく第三者を復代理人として選任した。上告人は、この復代理人の選任が民法104条の要件を欠き無効であると主張して争ったが、原審(控訴審)は具体的な事実関係(詳細は本判決文からは不明)に基づき、選任にはやむを得ない事由があったと認定した。
あてはめ
最高裁は、原審が認定した事実関係を前提とすれば、上告人の妻が本件復代理人を選任したことは「やむを得ない事由」にあたると解するのが相当であると判断した。具体的な事情は判決文から詳らかではないが、代理人本人による履行が困難であり、かつ復代理人による処理が必要とされる状況があったと評価される。
結論
本件復代理人の選任は有効であり、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和34年8月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】日常家事に関する代理権を基礎として権限外の行為がなされた場合、その相手方が代理権があると信ずるにつき正当な理由があるときは、民法110条が適用または類推適用される。 第1 事案の概要:職業軍人であった夫(上告人)は、昭和19年に南方へ出征する際、妻に対して後事を託し、日常家事に関する代理権を授与し…
任意代理における復代理人選任の適法性を争う場面で、104条の要件充足性を肯定する際の根拠として活用できる。特に「妻」が代理人となっている事案において、代理人自らの事務処理を強制することが酷な事情や、本人の利益に資する事情があれば、同条の要件を緩やかに肯定する一助となる。
事件番号: 昭和28(オ)1350 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
本人の渡米不在中権限を踰越して土地売却の代理行為をした代理人について、本人の実印を所持していた事実の外、後記(判決理由参照)のような事情もあつたときは、民法第一一〇条の代理権ありと信ずべき正当の理由があるものということができる。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和34(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和37年10月2日 / 結論: 棄却
親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であつても、民法第八二六条にいう「利益が相反する行為」にあたる。
事件番号: 昭和28(オ)111 / 裁判年月日: 昭和31年7月27日 / 結論: 破棄差戻
不動産の譲渡人から与えられた代理権に基き、譲渡人の死亡後同人の代理人名義の申請によつてなされた移転登記は、それが現在の真実な権利状態に符合するものである限り、対抗力を有し、譲渡人の相続人は譲受人に対し、その抹消を請求することはできない。