判旨
不動産の買主が、当該不動産を第三者に転売し、その第三者が既に所有権移転登記を完了している場合には、買主は売主に対して自己への所有権移転登記を請求することはできない。
問題の所在(論点)
不動産の買主が対象不動産を第三者に転売し、その第三者が既に登記を完了している場合に、買主は売主に対して自己への所有権移転登記を請求し得るか。
規範
不動産の売買契約に基づく所有権移転登記請求は、その不動産の所有権が実体法上、移転可能な状態にあることを要する。買主が第三者に転売し、かつ当該第三者が登記を具備して完全な所有権を取得した場合には、中間者である買主への登記移転はもはや許容されない。
重要事実
上告人(買主)は、被上告人(売主)から本件不動産を買い受けたが、その後、当該不動産を第三者Dに転売した。Dは、上告人からの転売を受けて本件不動産の所有権を取得し、既にその旨の所有権移転登記を経由していた。この状況において、上告人が被上告人に対し、売買を原因とする自己への所有権移転登記を求めて訴えを提起した。
あてはめ
本件において、上告人は被上告人との売買契約の当事者であるが、既に本件不動産をDに転売している。そして、Dにおいて既に所有権取得登記がなされている以上、不動産の物権変動の過程はDの登記によって確定しているといえる。このように、転売の最終取得者が登記を完了した状況下では、中間者である上告人が被上告人に対して自己への登記移転を請求する法的利益、あるいは実体法上の請求権は消滅したと解される。
結論
買主による所有権移転登記請求は認められない。
実務上の射程
中間省略登記が行われた事案や、登記請求権の行使可能性が争点となる場面で、物権変動の実態と登記が一致している場合の請求の可否を判断する際に参照される。民法177条の対抗関係の問題というよりは、登記請求権の発生・消滅に関する実体法的適格の有無を判示したものといえる。
事件番号: 昭和35(オ)1163 / 裁判年月日: 昭和36年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。 第1 事案の概要:上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地につ…
事件番号: 昭和47(オ)1121 / 裁判年月日: 昭和49年3月19日 / 結論: その他
賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない。
事件番号: 昭和23(オ)117 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】双務契約において、相手方の代金支払義務の不履行を理由とする履行遅滞の効果を主張するには、自己の負担する反対債務(所有権移転登記義務等)につき、適法な履行の提供を完了していることが必要である。 第1 事案の概要:売主である上告人と買主である被上告人は、山林の売買契約を締結し、残代金4万5000円の支…
事件番号: 昭和27(オ)128 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
一 真正の相続人が家督相続の回復をしない限り、真正相続人以外の第三者は、個々の特定財産についても、表見家督相続人に対し、相続の無効を理由として、その承継取得の効力を争うことはできない。 二 表見相続人が被相続人の子であるものとしてなされた家督相続につき相続の無効を主張できない者は、被相続人の妻が表見相続人の母(親権者)…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。