判旨
不法行為に基づく損害賠償請求において、加害者の過失に関する立証責任は被害者(原告)側が負う。また、売買契約を締結した当事者は、商法512条の「他人のために行為をした者」には該当せず、同条に基づく報酬請求は認められない。
問題の所在(論点)
1. 不法行為に基づく損害賠償請求において、過失の立証責任はどちらが負うか。 2. 売買契約の当事者が行った行為について、商法512条(商人の報酬請求権)の適用があるか。
規範
1. 不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求においては、原則として請求者側が加害者の過失の存在を立証する責任を負う。 2. 商法512条の報酬請求権が認められるためには、「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたこと」を要するが、自己の売買契約の履行としてなされた行為はこれに該当しない。
重要事実
上告人は、魚の売買契約に関連して発生した箱代および手数料について、被上告人に対し不法行為に基づく損害賠償および商法512条に基づく報酬請求等を求めて提訴した。原審は、被上告人の過失を認めず、また箱代等の額についても確証がないとして請求を棄却した。これに対し、上告人が過失の有無や商法512条の適用を巡って上告した事案である。
あてはめ
1. 不法行為責任の成否について、本件は民法709条に基づく請求であるため、過失の立証責任は上告人にある。原審が認定した事実関係によれば、被上告人に過失があるとは認められず、立証が尽くされていない。 2. 商法512条について、上告人は本件の魚について売買契約を締結しており、その行為は自己の契約に基づく履行であって、報酬請求の要件である「他人のために或る行為をなした」ものには当たらない。
結論
不法行為の過失の立証責任は原告(被害者)にあり、また売買契約当事者の行為に商法512条は適用されないため、上告を棄却する。
実務上の射程
不法行為の立証責任の原則を確認する際の基礎判例として機能する。また、商法512条の「他人のために」という要件が、自己の利益(売買契約の履行等)を目的とする場合には否定されることを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和28(オ)167 / 裁判年月日: 昭和30年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の「正当な理由」の存否は、当該案件における諸般の具体的事情を斟酌して判定すべきであり、相手方の過失の有無もその判断の重要な資料となる。 第1 事案の概要:上告人(相手方)が、無権代理人による行為について、当該代理人に権限があると信じて取引を行った事案。原審は、認定された諸事情の下で上告…