判旨
最高裁判所への抗告は、原決定に憲法違反の判断が含まれる場合に限られ、単なる訴訟法違反等の主張を憲法違反に名を藉りて主張するものは不適法である。
問題の所在(論点)
事実上の違法(金品授受等の不正)を理由とする議決の効力の争いを「憲法違反」として構成した場合、最高裁判所に対する適法な抗告理由にあたるか。
規範
最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を持つのは、訴訟法(旧民訴法419条の2、現行の特別抗告等)が特に認めた場合に限られる。最高裁判所への抗告理由は、原決定において憲法解釈の誤りがあること、または憲法に適合するか否かの判断が不当であることを要し、単なる訴訟法違反等の事実誤認や法令違背の主張は適法な理由とはならない。
重要事実
抗告人は、岡山県議会の議員が分町に関する議決を行う際、金品の供与を受ける等の不正行為があったと主張した。その上で、かかる不正に基づく議決は憲法15条2項(公務員の奉仕者性)に違反すると主張し、岡山県議会の分町議決の違法事由について疎明が不十分であるとした原決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。
あてはめ
抗告人の主張は、本質的には「県議会の議決における違法事由の疎明が不十分である」という原審の事実認定や証拠評価を非難するものに過ぎない。これは「憲法違反」という形式的な表現を用いているものの、その実体は単なる訴訟法違反の主張である。したがって、原決定が憲法に適合するか否かの判断自体を争うものとは認められず、法定の抗告理由を具備していないといえる。
結論
本件抗告は適法な抗告理由を欠く不適法なものであるため、却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(ク)40 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告が許されるのは、憲法違反を理由とする場合に限られる。単なる法令解釈の不当を憲法違反と主張することは、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、相手方の占有を解いて執行吏に保管させ、現状変更を禁止する仮処分決定を得ていた。その後、相手方が現状を変更したことを理由に…
特別抗告や許可抗告の場面において、実質的な理由が事実誤認や単なる法令違反であるにもかかわらず、形式的に「憲法違反」を仮装して申し立てることは許されないという「憲法違反に名を藉りる」類型を明確にしたものである。答案上は、不服申立ての適格や上告理由の検討において、形式的な主張だけでなく実質的な不服の内容を確定すべき局面で引用し得る。
事件番号: 昭和25(ク)69 / 裁判年月日: 昭和26年1月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民訴法に特別の定めがある場合に限り許され、その理由は原決定の憲法判断の不当性に限られる。単なる法令違背を憲法違反と主張することは適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、不動産登記法の裁判上の手続において非訟事件手続法19条の適用を否定した原決定に対し、法…
事件番号: 昭和25(ク)55 / 裁判年月日: 昭和25年9月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、法律により特に認められた場合に限り許され、民事事件においては原決定における憲法判断の不当を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その申立理由において、原決定に憲法違反があることや、原決定が憲法に適合するか否…
事件番号: 昭和26(ク)41 / 裁判年月日: 昭和26年5月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)のみがこれに当たる。 第1 事案の概要:抗告人は、何らかの裁判(詳細は判決文からは不明)に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし…
事件番号: 昭和24(ク)87 / 裁判年月日: 昭和25年2月3日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】行政処分の執行停止の要件該当性の判断は、法律の解釈適用の問題にすぎず、当然には憲法違反の問題を生じない。 第1 事案の概要:抗告人は、原審による行政処分の執行停止決定に対し、地方公共団体の権能を剥奪し公共の福祉を無視するものであるとして、憲法94条違反を理由に特別抗告を申し立てた。 第2 問題の所…