判旨
事実たる慣習は、裁判所に顕著であるなどの特段の事情がない限り、原則として当事者が主張・立証すべき事実上の問題である。
問題の所在(論点)
事実たる慣習の有無が、当事者の主張・立証を要する「事実」にあたるか、それとも裁判所が職権で調査すべき「法」の領域に属するかが問題となる。
規範
事実たる慣習は、法の適用を補完するものであるが、その存否は原則として事実上の問題に属する。したがって、裁判所に顕著な事実である場合を除き、弁論主義の適用を受け、当事者がその存在を主張・立証する責任を負う。
重要事実
上告人が特定の慣習の存在を前提とした主張を行った事案において、原審が当該慣習を認めなかったことに対し、上告人が慣習の有無は裁判所が職権で判断すべき事項であるとして上告した事案である。
あてはめ
事実たる慣習の有無は「事実上の問題」であると解される。本件において、上告人が依拠する大審院判決は裁判所に顕著であることを前提とした事例であり、本件には適切ではない。裁判所に顕著な事実といえない以上、当事者が主張・立証を尽くすべきであり、これを欠く場合にはその存在を認めることはできない。
結論
事実たる慣習の存在は当事者が主張・立証すべきであり、職権調査を要しないとした原審の判断は正当である。
実務上の射程
弁論主義の対象となる事実の範囲を検討する際に、経験則や法規と対比して「事実たる慣習」を位置づけるための射程を持つ。実務上は、商慣習などの主張において、それが広く知られた顕著な事実でない限り、証拠による立証が必要であることを示す際の根拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)257 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役会の議事があった事実は、商法(現行会社法)上の議事録のみによって認定しなければならないものではなく、他の証拠によっても認定することが可能である。 第1 事案の概要:農機具売買契約の代金支払のために約束手形が振り出された事案において、その背景となる取締役会の議事の有無が争点となった。第一審判決…