判旨
当事者間に特定の資産のみを弁済原資とする合意があったという事実は、裁判所に顕著な事実とはいえず、証拠による証明を要する。
問題の所在(論点)
消費貸借契約において弁済原資を特定の資産に限定する旨の合意がなされたという事実が、「裁判所に顕著な事実」として証拠によらずに認定できるか。
規範
民事訴訟において、裁判所に顕著な事実(公知の事実等)については証明を要しないが、特定の債務について弁済の原資を特定の資産に限定する旨の特約の存在は、通常、裁判所に顕著な事実には当たらない。
重要事実
上告会社(被告)が締結した消費貸借契約において、その弁済は特に会社の南方資産のみをもって行う旨の合意(責任財産を限定する特約)があったと主張して争った事案。上告人は、かかる事実が裁判所に顕著な事実であると主張した。
あてはめ
本件における消費貸借が特に上告会社の南方資産のみをもって弁済することと定めて成立したという事実は、一般に知れ渡っている公知の事実とはいえず、裁判官が職務上知り得た顕著な事実ともいえない。したがって、当該事実に合致する証拠がない以上、かかる合意の存在を前提とする抗弁は認められない。
結論
特定の資産のみを弁済原資とする旨の事実は裁判所に顕著な事実とはいえないため、証拠がない限り、これを前提とする抗弁は排斥される。
実務上の射程
不要証事実である「顕著な事実」の範囲を限定的に解する一例である。実務上、契約上の特約の存在を主張する場合には、たとえそれが当時の社会的背景(戦時下の南方事業等)に関連するものであっても、原則通り証拠による証明が必要であることを示唆している。
事件番号: 昭和34(オ)257 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役会の議事があった事実は、商法(現行会社法)上の議事録のみによって認定しなければならないものではなく、他の証拠によっても認定することが可能である。 第1 事案の概要:農機具売買契約の代金支払のために約束手形が振り出された事案において、その背景となる取締役会の議事の有無が争点となった。第一審判決…