判旨
農地売渡計画の公告において、売渡すべき土地の正確な表示などの具体的記載は不要であり、計画を定めた旨の記載があれば足りる。
問題の所在(論点)
行政処分(農地売渡計画)の成立・効力発生要件としての「公告」において、対象物件の正確な表示などの具体的記載を欠くことが、公告の不備として処分の効力を否定する事由となるか。
規範
行政処分の効力発生要件としての公告(自創法に基づく売渡計画等)においては、特段の事情がない限り、計画を定めた旨の記載があれば足り、対象となる土地の正確な表示、時期、対価などの詳細な記載を欠いていても、その公告の効力は妨げられない。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づく農地売渡計画が樹立された事案において、原審は、当該計画の公示文書に「売渡すべき土地の正確な表示」がなかったことを理由に、適式な公告がなされなかったと判断した。これにより、当該計画は有効な行政処分として成立しないと認定されたため、上告人がこれを争った。
あてはめ
買収計画に関する先例の趣旨は売渡計画にも妥当する。公示文書に土地の正確な表示がない点は、公告の効力を左右するものではなく、直ちに異例な事態ともいえない。原審が詳細な表示の欠如をもって直ちに公告の不存在を認定したことは、公告の要件に関する法令の解釈を誤るか、あるいは審理不尽の違法がある。公告の効力を否定するには、土地表示の欠如以外に「特別の事情」があることを要するが、本件ではそれが説示されていない。
結論
売渡計画の公告に土地の正確な表示は不要であり、これを理由に公告の効力を否定した原判決には法令解釈の誤りがあるため、破棄・差戻しを免れない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(オ)192 / 裁判年月日: 昭和26年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地売渡計画の公告は、売渡計画書の縦覧期間を定めた旨の記載があれば足り、売渡の相手方や対価等の詳細を記載する必要はなく、不服申立てを経ずに訴訟を提起できる「正当な事由」も認められない。 第1 事案の概要:上告人らは、B地区農地委員会が行った農地売渡計画の公告について、売渡の相手方や対価等の重要事項…
行政処分の成立要件としての告知・公証の程度について、実務上は「内容の特定」よりも「計画決定の事実の公示」を重視する緩やかな基準を示したものといえる。答案上は、公告の不備が処分の無効・不存在をもたらすか否かの場面で、公告に要求される記載内容の限界を示す規範として引用できる。
事件番号: 昭和29(オ)639 / 裁判年月日: 昭和31年3月30日 / 結論: 棄却
一 原審の認定する事情(原判決理由参照)の下では、地主は、遡及買収の基準日当時やむを得ない事由のため一時的に不在であつたが、右事由のやみ次第元の住所への復帰が期待される状況にあつたものと認むべきであるから、その当時右地主に自作農創設特別措置法施行令第一条第四号のその他の事由があつたものと認むべきである。 二 地主に自作…
事件番号: 昭和28(オ)647 / 裁判年月日: 昭和30年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく買収計画の公告には、買収すべき農地の表示等は不要であり、また所有者への特段の通知も不要である。この解釈は憲法に違反せず、公告を見逃して出訴期間を徒過しても、後の買収処分取消訴訟で計画の適否を争う余地があるため裁判を受ける権利を侵害しない。 第1 事案の概要:上告人は、農…
事件番号: 昭和33(オ)39 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: その他
一 土地台帳の記載に誤りがあるものとして正規の手続によりそれが訂正された場合には、たとえ、右訂正が農地の買収に関する訴訟の係属後であつても、地主の保有小作地の面積の計算については、訂正後の台帳によるべきである。 二 一筆の農地の地積中畦畔の面積の占める割合が三分の一を越える程度に過大である場合には、地主の保有小作地の面…
事件番号: 昭和27(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく買収農地の売渡相手の選定は、農業委員会の自由な裁量に委ねられており、その行使が著しく不合理でない限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地を含む土地を50万円で買い受けた実態があったが、農業委員会は本件農地の売渡計画において、上告人以外の第三者を売渡の相手方…