一 原審の認定する事情(原判決理由参照)の下では、地主は、遡及買収の基準日当時やむを得ない事由のため一時的に不在であつたが、右事由のやみ次第元の住所への復帰が期待される状況にあつたものと認むべきであるから、その当時右地主に自作農創設特別措置法施行令第一条第四号のその他の事由があつたものと認むべきである。 二 地主に自作農創設特別措置法施行令第一条第四号のその他の事由があるものと認めてこれを在村地主として取り扱うべき場合であるにかかわらず、市町村農業委員会がその旨の認定をしないで、その所有農地を不在地主の小作地として買収することは違法と解すべきである。 三 自作農創設特別措置法第五条第六号の一時賃貸の小作地と認めてこれを買収より除外すべき場合であるにかからず、市町村農業委員会がその旨の認定をしないでこれを買収することは違法と解すべきである。
一 地主に自作農創設特別措置法施行令第一条第四号のその他の事由があるものとして在村地主と認むべき事例 二 地主に自作農創設特別措置法施行令第一条第四号のその他の事由があるものとしてこれを在村地主として取り扱うべき場合であるにかかわらず、市町村農業委員会がその旨の認定をしないで、その所有農地を不在地主の小作地として買収することの適否 三 自作農創設特別措置法第五条第六号の一時賃貸の小作地と認めてこれを買収より除外すべき場合であるにかかわらず、市町村農業委員会がその旨の認定をしないでこれを買収することの適否
自作農創設特別措置法施行令1条4号,自作農創設特別措置法5条6号
判旨
自創法施行令1条4号の「その他の事由」とは、買収基準日当時にやむを得ない事由により一時的に不在であっても、その事由が解消され次第元の住所への復帰が期待される状況を指し、この客観的事由がある場合に買収を行うことは違法である。
問題の所在(論点)
自創法施行令1条4号にいう「その他の事由」による一時不在の意義、および同法5条6号に基づく買収除外要件が問題となる。具体的には、特定の事由による不在者が「在村地主」として扱われるべき基準、および一時賃貸地の買収制限の判断枠組みが争点となった。
規範
自創法施行令1条4号の「その他の事由」がある場合とは、買収基準日当時、やむを得ない事由のため一時的に不在であったが、その事由の解消次第、元の住所への復帰が期待される客観的状況にある場合をいう。また、自創法5条6号の一時賃貸小作地については、賃貸人が近い将来自作農となることが客観的に認められ、かつその自作化が相当とされる事情がある限り、買収から除外すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)1084 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法における農地買収令書の交付に代わる公告の適法性は、農地買収の急速遂行の必要性や当時の交通事情等を総合考慮して判断すべきであり、知事が相当な調査を尽くしても所有者の住所が判明しない場合には、公告をもって令書交付に代えることができる。 第1 事案の概要:上告人はブラジルに在住してい…
重要事実
被上告人は、買収基準日当時、自創法施行令1条3号(昭和20年8月15日以前の召集)には該当しないものの、何らかの「やむを得ない事由」によって一時的に住所を離れていた。市町村農業委員会は、被上告人が在村地主に該当しないとして買収の処分を行ったが、被上告人は元の住所への復帰が期待される状態にあり、かつ、近い将来に自作農となることが客観的に認められる状況にあった。
あてはめ
被上告人は、法令に掲げられた特定の召集(1条3号)には該当しないが、一時的に不在であった事由はやむを得ないものであり、事由が止み次第、元の住所への復帰が期待される客観的状況にあったといえる。したがって、1条4号の「その他の事由」がある場合に該当する。また、被上告人が近い将来に自作農となることが客観的に認められ、その自作化が相当とされる事情も認められる。このような客観的事由が存在する以上、農業委員会は都道府県知事の承認を経て在村地主として扱うべきであり、買収から除外すべきであった。
結論
被上告人を不在地主として扱いなされた買収処分は違法である。市町村農業委員会が客観的に存在する除外事由を看過して買収を行うことは許されない。
実務上の射程
行政庁の裁量的判断が介在し得る場面であっても、法令が定める除外要件の客観的事実が存在する場合には、その事実を看過してなされた処分は違法となるという判断枠組みを示している。行政法における事実誤認や要件該当性の判断に関する答案構成に有用である。
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…
事件番号: 昭和34(オ)681 / 裁判年月日: 昭和37年3月1日 / 結論: 棄却
いわゆる刈分小作地が昭和二二年三月頃当事者間の合意によつて、そのうちの約四割を地主の自作地とし残余の部分を数名の「作人」らの小作地とした場合、従前の「作人」で新らたに小作人となつた者によつてなされた右小作地についての遡及買収の申請であつても、許されないものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
事件番号: 昭和33(オ)39 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: その他
一 土地台帳の記載に誤りがあるものとして正規の手続によりそれが訂正された場合には、たとえ、右訂正が農地の買収に関する訴訟の係属後であつても、地主の保有小作地の面積の計算については、訂正後の台帳によるべきである。 二 一筆の農地の地積中畦畔の面積の占める割合が三分の一を越える程度に過大である場合には、地主の保有小作地の面…