判旨
自作農創設特別措置法における農地買収令書の交付に代わる公告の適法性は、農地買収の急速遂行の必要性や当時の交通事情等を総合考慮して判断すべきであり、知事が相当な調査を尽くしても所有者の住所が判明しない場合には、公告をもって令書交付に代えることができる。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法9条1項但書に規定される「令書の交付をすることができないとき」の意義、および海外在住の所有者に対し公告による買収手続きを行うことの適法性が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法9条1項但書により公告をもって令書交付に代えることができる「農地所有者が知れないとき、その他令書の交付をすることができないとき」に該当するか否かは、農地買収事務の急速遂行の必要性、当時の交通・通信事情、及び行政庁による所有者の所在調査の程度を総合し、社会通念に照らして判断する。
重要事実
上告人はブラジルに在住していたが、知事は耕作者等に対し上告人の住所を尋ねる調査を行ったものの判明しなかった。また、上告人の母の養子であり農地委員であった者からも上告人の住所についての申し出はなかった。当時は農地買収の急速な遂行が要請されており、かつ日本とブラジル間の交通事情も極めて困難な状況にあった。そのため、知事は令書の直接交付に代えて公告による手続きを行った。
あてはめ
まず、知事が耕作者等に対して上告人の住所を調査したものの判明せず、親族関係にある農地委員からも情報の提供がなかったことから、知事は相当な調査を尽くしたといえる。次に、当時の農地改革は急速な遂行が強く要請される国家的課題であった。さらに、ブラジルとの間の交通・通信事情の困難さを鑑みれば、通常の手段で令書を交付することは客観的に不可能または著しく困難な状況にあった。したがって、本件は「令書の交付をすることができないとき」に該当し、公告による手続きは適法である。
結論
本件買収令書の交付に代わる公告は適法であり、上告人の請求は認められない。
事件番号: 昭和29(オ)639 / 裁判年月日: 昭和31年3月30日 / 結論: 棄却
一 原審の認定する事情(原判決理由参照)の下では、地主は、遡及買収の基準日当時やむを得ない事由のため一時的に不在であつたが、右事由のやみ次第元の住所への復帰が期待される状況にあつたものと認むべきであるから、その当時右地主に自作農創設特別措置法施行令第一条第四号のその他の事由があつたものと認むべきである。 二 地主に自作…
実務上の射程
行政上の通知・送達が困難な場合における代替手段(公告)の許容範囲を検討する際の判断要素として活用できる。特に、行政目的の緊急性・公益性と、相手方の所在調査の程度を比較衡量する枠組みとして有用である。
事件番号: 昭和33(オ)1083 / 裁判年月日: 昭和36年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、買収対象が具体的にどの区域であるかが客観的に明らかであり、かつ処分庁および被処分者がそれを容易に推知できる場合には、買収対象の特定に欠けるところはない。 第1 事案の概要:上告人が所有し、訴外人が大正3年頃から昭和21年頃まで小作していた農地(2反7畝28歩のうちの1反7畝…
事件番号: 昭和34(オ)1181 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収において、買収対象地の選択は行政庁の裁量に属し、地主に選択権はない。また、宅地化の予見可能性がない農地は同法5条5号の除外事由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人の所有する本件農地に対し、国が自作農創設特別措置法に基づき買収処分を行った。これに対し上告人は…
事件番号: 昭和29(オ)256 / 裁判年月日: 昭和33年9月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、一旦定められた買収計画が異議により事実上取り消された場合、法定の買収指示請求がなくても、市町村農地委員会は都道府県農地委員会の指示や職権によって再度買収計画を策定することが可能である。 第1 事案の概要:上告人らが所有する農地について、法6条の2に基づ…
事件番号: 昭和33(オ)39 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: その他
一 土地台帳の記載に誤りがあるものとして正規の手続によりそれが訂正された場合には、たとえ、右訂正が農地の買収に関する訴訟の係属後であつても、地主の保有小作地の面積の計算については、訂正後の台帳によるべきである。 二 一筆の農地の地積中畦畔の面積の占める割合が三分の一を越える程度に過大である場合には、地主の保有小作地の面…