判旨
代表取締役の代理権消滅後にされた手形裏書について、相手方がその事実を知らなかった場合には、会社法上の表見代表規定等の類推適用により、会社はその責任を免れることができない。
問題の所在(論点)
代表取締役の資格喪失後になされた代表行為(手形裏書)について、会社は善意の第三者に対して責任を負うか(代理権消滅後の表見代理の成否)。
規範
代表取締役であった者がその資格を喪失した後に、なお会社を代表して行為をした場合、民法112条(代理権消滅後の表見代理)の法理ないし会社法上の表見代表の規定を類推適用し、その事実につき善意の第三者に対しては、会社はその責任を負うべきである。
重要事実
上告人(会社)は、被上告人会社から手形の裏書譲渡を受けた。しかし、当該裏書を行ったDは、裏書当時すでに被上告人会社の代表取締役の資格を喪失していた。上告人は、Dに代表権がないことを知らずに手形の裏書を受けた(善意)と主張したが、原審はこの点について審理判断せず、上告人の請求を排斥した。
あてはめ
上告人は、Dが本件手形の裏書を受ける当時、実際には会社を代表する資格がなかったことを知らなかったと主張している。これは、代理権消滅後の表見代理における「善意の第三者」に該当する旨の主張である。原審は、この善意の有無という要件について審理判断を尽くしておらず、上告人の主張を退けた判断には審理不尽の違法があるといえる。
結論
代表権消滅につき善意の第三者に対しては、会社はその代表行為の効力を否定できないため、原判決を破棄し、善意の有無を審理させるため差し戻す。
実務上の射程
代表取締役の退任登記前であれば会社法908条2項の問題となるが、登記後であっても、民法112条の類推適用等により善意の相手方が保護される可能性を示唆する。実務上は、代理権消滅後の表見関係を主張する際の主張立証責任の所在や審理の必要性を指摘する文脈で使用する。
事件番号: 昭和29(オ)582 / 裁判年月日: 昭和30年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の不法行為能力を定める旧民法44条1項(現行34条・615条等参照)の解釈について、先行判決の判断を維持し、代表者がその職務を行うについて他人に加えた損害を賠償する責任を肯定する。 第1 事案の概要:上告人(法人)の代表者が行った行為に関して、民法上の法人の責任(旧民法43条・44条関連)が争…