判旨
農地の賃貸借契約の解除が正当であるといえるか否かは、賃貸借の解消を求めた経緯のみならず、賃貸人と賃借人双方の資産・職業・耕作状況などの生活実態を比較衡量して判断すべきである。
問題の所在(論点)
農地法等の規制下において、賃貸人による農地賃貸借の解除が「正当」であると認められるための判断枠組みが問題となる。
規範
農地賃貸借の解除における正当性の有無は、解除を求めるに至った主観的経緯だけでなく、賃貸人と賃借人双方の具体的・客観的な生活状況(職業、収入、耕作面積、資産等)を比較衡量し、契約を継続させることによって一方が受ける不利益と解除することによって他方が受ける利益の均衡に照らして判断される。
重要事実
賃貸人(上告人)は、長年県吏員として勤務し、退職後も農協連合会の役職に就きつつ、妻とともに約5反5畝の田畑を耕作し、宅地・建物・山林も所有していた。一方、賃借人(D)は約7反の田畑を耕作する専業農家であった。賃貸人は賃借人に対し、本件農地の返還を執拗に請求し、賃借人が不本意ながらこれに応じる形で解除に至った。
あてはめ
本件では、賃借人が返還を執拗に求められたという不当な経緯がある。また、生活状況を比較すると、賃貸人は安定した職業上の役職と相当の資産を有しており、本件農地が買収されたとしても生活が著しく悪化するとは考えられない。これに対し、賃借人は専業農家であり農地の喪失による影響が大きい。したがって、双方の生活実態を総合的に比較衡量すれば、本件解除に正当性を認めることはできない。
結論
本件農地賃貸借の解除は正当とは認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、解除の「正当事由」を判断する際、単なる合意の存否や強要の有無だけでなく、当事者間の経済的基盤(生活困窮度や自作の必要性)の格差を重視する実質的な衡量手法を示したものであり、現在の農地法における解約制限の解釈の基礎をなす。
事件番号: 昭和26(オ)724 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】補助参加人は当事者を補助する従属的な地位にすぎないため、被参加人は、補助参加人が提起した控訴をいつでも取り下げることができる。 第1 事案の概要:補助参加人が被参加人のために控訴を提起したが、その後、被参加人が当該控訴を取り下げた。補助参加人は、被参加人による控訴取り下げは認められないとして争った…
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。
事件番号: 昭和26(オ)7 / 裁判年月日: 昭和27年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未墾地買収において、複数の開拓適地が存在する場合の選択は農地委員会の裁量に属し、裁判所の審査は買収対象が法定要件を充足しているか否か、及び手続の適法性に限られる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、農地委員会が上告人所有の山林を未墾地として買収する処分を行った。これに対し上告人が、①…
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…