判旨
賃借人が善管注意義務等に違反して賃借物に変更を加えた場合であっても、賃貸借契約の存続中は、賃貸人は原状回復を求める権利を有しない。
問題の所在(論点)
賃借人が賃借物の用法遵守義務や善管注意義務に違反して目的物の現状を変更した場合、賃貸人は契約存続中に原状回復請求権を行使できるか。民法616条、594条1項、400条の解釈が問題となる。
規範
賃借人が民法616条(準用する594条1項)や400条の善管注意義務に違反して賃借物に変更を加えた場合、賃貸人はそれによって生じた損害の賠償を請求できるにとどまり、賃貸借契約の存続中に当然に原状回復を請求する権利までを有するものではない。
重要事実
賃借人が賃借物の形状等に変更を加えた事実が認められる事案において、賃貸人がその原状回復を求めて提訴した。判決文からは変更の具体的な内容や契約の存続状況の詳細は不明であるが、原状回復請求権の存否が争点となった。
あてはめ
賃借人による賃借物の変更は、民法616条が準用する594条1項の用法遵守義務違反や、400条の善管注意義務違反に該当し得る。しかし、これらの義務違反がある場合であっても、法が認めているのは損害賠償請求(民法621条等参照)であり、契約の終了を待たずに直ちに原状回復を請求できるとする根拠はない。したがって、かかる権利があることを前提とする本件請求は認められない。
結論
賃貸人の原状回復請求は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、賃貸借契約存続中における原状回復請求を否定したものである。実務上、契約存続中の無断改築等に対しては、原状回復請求ではなく、信頼関係破壊を理由とする解除や損害賠償請求を検討すべきであることを示唆している。ただし、契約終了時(民法621条)の原状回復義務とは峻別して理解する必要がある。
事件番号: 昭和36(オ)567 / 裁判年月日: 昭和37年1月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借の解約申入れにおける正当事由の存否は、諸般の事実関係を総合的に考慮して判断されるべきであり、また造作買取請求権の対象となる「造作」に該当するか否かは、当該目的物の性質や取引の実態に基づき個別に判断される。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、昭和25年3月27日…