判旨
売買契約の際、売主が買主から目的物を借り受けて引き続き占有する旨の合意がなされた場合、民法183条の占有改定による引渡しがあったと認められる余地がある。
問題の所在(論点)
民法183条の占有改定による引渡しを認めるために、譲受人が現実に占有を取得する必要があるか、また売主が買主から借り受けて占有を継続する旨の合意が「占有の改定」による引渡しの主張を包含するか。
規範
民法183条の占有改定は、自己の占有物を以後他人のために占有する意思を表示することによって成立する。引渡しの有無が問題となる局面において、譲渡人が引き続き目的物を借受けて占有する旨の合意がある場合には、法律上の引渡し(占有改定)がなされたものと解すべきである。
重要事実
上告人(買主)は、本件土地の売買契約当時、売主である被上告人Bとの間で「昭和21年度だけはBが上告人から土地を借り受けて耕作し、その後上告人に返還する」との合意が成立したと主張した。これに対し、原審は上告人が現実に土地の引渡しを受けていないことを理由に売買を無効と判断したため、上告人が引渡しの有無を争い上告した。
あてはめ
上告人の主張によれば、売買契約時に売主Bが「1年間だけ借用して耕作したい」と申し出、買主たる上告人がこれを承認している。この合意は、Bが本件土地を以後上告人のために占有する意思を表示したものといえ、占有改定による引渡しの主張を包含するものと解される。したがって、現実に引渡しを受けていないという事実のみをもって直ちに引渡しがないと断定することはできず、占有改定の成否を審理すべきである。
結論
占有改定による引渡しの主張が含まれる可能性があるにもかかわらず、現実に引渡しがないことのみをもって直ちに引渡しを否定した原判決には審理不尽の違法がある。
実務上の射程
対抗要件(177条、178条)としての引渡しや、即時取得(192条)における引渡しの要否を検討する際、現実の引渡し(182条1項)だけでなく占有改定(183条)も含まれ得ることを示す素材として重要である。特に本判決は、当事者間の借用合意から占有改定を推認する構成を認めている。
事件番号: 昭和33(オ)886 / 裁判年月日: 昭和37年3月20日 / 結論: 棄却
当事者の主張した契約と認定の契約との間に同一性が認められる限り、その間たとえ契約成立の日時、履行期等につき多少くい違いがあつても、当事者の主張しない事実に基づいて裁判をした違法があるとはいえない。
事件番号: 昭和33(オ)568 / 裁判年月日: 昭和34年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法188条による権利の適法推定は、占有者が所有者に対して占有権原を主張する場合には適用されず、所有者に対抗できる正当な権原があることを別途立証する必要がある。 第1 事案の概要:上告人(占有者)は、本件土地を占有していたところ、被上告人(所有者)から土地の返還を求められた。上告人は、自身に借地権…