判旨
賃貸人に切迫した必要がない場合であっても、唯一の住居の明渡しを求めることが直ちに憲法の精神に反するものではなく、民事上告の適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
賃貸人に切迫した必要がない状況での住宅明渡請求が、憲法違反または憲法の精神に反する不当なものとして、民事上告における適法な上告理由となり得るか。
規範
民事事件において、賃貸人に切迫した必要がないのに賃借人の唯一の住居の明渡しを求めることが、直ちに憲法の精神に反するような法令違反を構成するものではない。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)から唯一の住居の明渡しを求められた。上告人は、被上告人に切迫した必要がないにもかかわらず明渡しを迫ることは憲法の精神に反すると主張して上告した。
あてはめ
上告人の主張は、単に賃貸人の必要性の欠如と賃借人の居住の重要性を対比させるものであり、判決そのものに具体的な法令違反を指摘するものではない。これは事実誤認の主張に帰するか、あるいは憲法の精神に反するという独自の主張に留まり、最高裁判所における審判の特例に関する法律に定める調査を要する事項には該当しない。
結論
本件上告は棄却される。賃貸人の必要性が切迫していないという事情のみでは、住居の明渡しを求めることが憲法違反等の適法な上告理由にはならない。
実務上の射程
建物の明渡請求における正当事由(借地借家法28条)等の判断において、当事者双方の事情を比較考量すべき点は民事上の解釈問題にすぎず、憲法違反を理由とした上告は認められにくいことを示唆している。
事件番号: 昭和26(オ)760 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借家法1条の2(現借地借家法28条)に基づく解約申入れの正当事由は、当事者双方の事情を比較考量して判断すべきであり、その判断が妥当である限り、憲法上の財産権の侵害には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、建物賃貸人(上告人)が賃借人に対し、借家法(当時)1条の2に基づき建物の解約申入れを行った事…