判旨
人身保護法による救済を求める利益は、身体の自由が回復された場合には失われるため、保釈により釈放された者は救済の利益を欠く。
問題の所在(論点)
人身保護法に基づく救済を求めている者が、保釈決定によって釈放され身体の自由を回復した場合、当該請求に係る「救済の利益」は失われるか。
規範
人身保護法に基づく請求において、請求の利益(救済の利益)が認められるためには、対象者が現に不当な身体の拘束を受けていることを要する。したがって、事後的に身体の自由が回復された場合には、もはや同法による救済を求める利益は消滅する。
重要事実
抗告人は身体を拘束されていたが、昭和25年5月31日になされた保釈決定に基づき、同日釈放された。これにより、抗告人は身体の自由を回復した。その後、人身保護法による救済を求めて抗告を維持していた。
あてはめ
本件において、記録上の釈放通知書によれば、抗告人は保釈決定によって既に釈放され、身体の自由を回復していることが明らかである。人身保護法は不当な拘束からの解放を目的とするものであるところ、既に釈放という目的が達せられた以上、重ねて同法による救済を判断する必要性はない。したがって、抗告人は救済の利益を欠くに至ったと評価される。
結論
抗告人は人身保護法による救済を求める利益を欠くため、本件抗告は却下される。
実務上の射程
本判決は、人身保護請求における「救済の利益」の存否を判断する際の基礎的な射程を示す。保釈のみならず、刑期満了や収容解除など、理由を問わず「身体の自由の回復」という客観的事実があれば、請求は不適法(却下)となる。答案上は、請求の適法性を論じる際の要件の一つとして利用する。
事件番号: 昭和25(ク)20 / 裁判年月日: 昭和25年6月15日 / 結論: 却下
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事件番号: 昭和31(ク)163 / 裁判年月日: 昭和31年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済は、身体の自由を拘束する裁判等の手続が権限なしになされ、又は法令の定める方式・手続に対する違反が顕著である場合に限られる。適式有効な令状に基づく拘束については、特段の事情がない限り、右の顕著な法令違反があるとはいえない。 第1 事案の概要:抗告人は、身体の自由を拘束されていると…
事件番号: 昭和28(ク)55 / 裁判年月日: 昭和29年4月26日 / 結論: 棄却
一 人身保護法により救済を請求することができるのは、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている場合において、その拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分が権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著であるときに限る。 二 平和条約第一一条及び昭和二七年法律第一〇三号が憲法に違反す…
事件番号: 昭和23(ク)30 / 裁判年月日: 昭和23年10月29日 / 結論: 却下
一 人身保護法による釈放の請求を排斥した決定に対しては、憲法違反を理由とするときに限り、最高裁判所に抗告の申立をすることができる。 二 昭和二三年政令第二〇一号違反の容疑により勾留された者が人身保護法により釈放を請求したのに対し、原決定が人身保護規則第四条に該当しないとの理由でこれを排斥した場合、右政令が憲法違反である…