一 人身保護法による釈放の請求を排斥した決定に対しては、憲法違反を理由とするときに限り、最高裁判所に抗告の申立をすることができる。 二 昭和二三年政令第二〇一号違反の容疑により勾留された者が人身保護法により釈放を請求したのに対し、原決定が人身保護規則第四条に該当しないとの理由でこれを排斥した場合、右政令が憲法違反であるとの理由は、右決定に対する最高裁判所への適法な抗告理由とならない。
一 人身保護法と最高裁判所への抗告理由 二 人身保護法上適法な抗告理由とならない場合
人身保護法21条,人身保護法規則46条,民訴法410条,民訴応急措置法7条,人身保護規則4条
判旨
裁判所による拘束に対する人身保護法上の救済は、拘束の裁判に権限の欠如または手続の著しい違反が顕著である場合に限り認められる。根拠法令の違憲無効を理由とする主張は、原則として人身保護規則4条の事由に該当せず、適法な抗告理由とならない。
問題の所在(論点)
裁判所による勾留という「裁判による拘束」に対し、その根拠法令の違憲性を理由に人身保護法上の救済を求めることが、人身保護規則4条の定める事由に該当するか。
規範
裁判所による拘束に対する人身保護法上の救済請求は、拘束に関する裁判が、その権限なしにされた場合、または法令の定める方式もしくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り、これをすることができる(人身保護規則4条)。
重要事実
抗告人らは、政令201号違反の容疑で裁判所の勾留状に基づき拘束された。これに対し、当該政令は憲法に違反し無効であり、無効な法令に基づく拘束は不当であるとして、人身保護法に基づき釈放を求めた。原審は、本件請求は単なる被疑事実の無罪主張にすぎず、人身保護規則4条の要件を満たさないとして棄却したため、抗告人が特別抗告を申し立てた事案である。
事件番号: 昭和31(ク)163 / 裁判年月日: 昭和31年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済は、身体の自由を拘束する裁判等の手続が権限なしになされ、又は法令の定める方式・手続に対する違反が顕著である場合に限られる。適式有効な令状に基づく拘束については、特段の事情がない限り、右の顕著な法令違反があるとはいえない。 第1 事案の概要:抗告人は、身体の自由を拘束されていると…
あてはめ
人身保護規則4条は、裁判による拘束の救済を権限の欠如または手続の著しい違反という形式的・顕著な事由に限定している。本件において抗告人が主張する政令201号の違憲性は、実質的な実体法の当否を争うものであり、拘束の裁判自体の権限や手続的瑕疵をいうものではない。したがって、原決定が規則4条に基づき請求を排斥したことに憲法違反の問題は生じず、単なる規則の解釈適用の不服にとどまるため、適法な抗告理由を構成しない。
結論
本件抗告は不適法であり、却下される。根拠法令の違憲主張のみでは、裁判による拘束を解くための「顕著な手続違反」等の要件を満たさない。
実務上の射程
人身保護法が、刑事訴訟手続等の通常の手続に対する補充的手段であることを示す判例である。裁判による拘束については、刑事訴訟法上の準抗告や抗告等で争うべきであり、人身保護法による救済は極めて限定的な場面(重大な権限逸脱・手続違反)に限られるという実務上の枠組みを画定している。
事件番号: 昭和24(ク)71 / 裁判年月日: 昭和24年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続に違法があっても、それが判決に影響を及ぼさない場合には、当該判決に基づく刑の執行は正当な理由に基づく拘禁にあたり、人身保護法2条に基づく救済の対象とはならない。 第1 事案の概要:特別抗告人(被拘束者)は、適法な勾留状によらない不法な拘禁状態で公判審理が行われ、有罪判決を宣告された。この判…
事件番号: 昭和25(ク)124 / 裁判年月日: 昭和25年12月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】人身保護法上の救済請求に関する最高裁判所への抗告は、人身保護規則46条により民事訴訟の例に従う。最高裁への抗告は憲法判断の不当を理由とする場合に限られ、単なる原決定の事実誤認や手続違憲以外の法令違反を主張するものは不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、人身保護法に基づき勾留の解除を…
事件番号: 昭和28(ク)55 / 裁判年月日: 昭和29年4月26日 / 結論: 棄却
一 人身保護法により救済を請求することができるのは、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている場合において、その拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分が権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著であるときに限る。 二 平和条約第一一条及び昭和二七年法律第一〇三号が憲法に違反す…
事件番号: 昭和25(ク)33 / 裁判年月日: 昭和25年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、原決定に憲法違反がある場合に限り許容される。単なる手続法規の違反を主張するにすぎない場合は、違憲の主張とは認められず不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人が原決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告人は抗告理由を記載した別紙を提出したが、その内容は原…