一 人身保護法により救済を請求することができるのは、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている場合において、その拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分が権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著であるときに限る。 二 平和条約第一一条及び昭和二七年法律第一〇三号が憲法に違反するとの主張を前提として、右条約及び法律に基いて拘束されている戦争犯罪人につき、人身保護法により釈放を請求することは許されない。
一 人身保護法による救済請求の要件 二 平和条約第一一条及び昭和二七年法律第一〇三号を違憲とする主張を前提とする人身保護法による戦犯釈放請求の当否
平和条約11条,昭和27年法律103号5条,人身保護法2条,人身保護規則4条,憲法31条,憲法98条
判旨
人身保護法による救済が認められるためには、拘束又はその裁判・処分が権限なしにされ、又は法令の定める方式・手続に著しく違反していることが顕著であることを要する。根拠法令の違憲を理由とする拘束の不当性の主張は、直ちに右の要件に該当するものではない。
問題の所在(論点)
根拠法令が憲法に違反することを理由として、人身保護規則4条にいう「拘束が権限なしにされ、又は法令の定める方式・手続に著しく違反していることが顕著である場合」に該当するといえるか。また、かかる違憲の主張に対して裁判所は判断を示す必要があるか。
規範
人身保護法2条、人身保護規則4条に基づき、救済の請求が認められるのは、拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分が「権限なしにされ」又は「法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合」に限定される。これは、同法が迅速かつ容易に人身の自由を回復させることを目的とする特別な救済方法であることに由来する。
重要事実
事件番号: 昭和23(ク)30 / 裁判年月日: 昭和23年10月29日 / 結論: 却下
一 人身保護法による釈放の請求を排斥した決定に対しては、憲法違反を理由とするときに限り、最高裁判所に抗告の申立をすることができる。 二 昭和二三年政令第二〇一号違反の容疑により勾留された者が人身保護法により釈放を請求したのに対し、原決定が人身保護規則第四条に該当しないとの理由でこれを排斥した場合、右政令が憲法違反である…
抗告人は、連合国による戦争犯罪人としての裁判に基づき、日本国との平和条約11条及び昭和27年法律103号に従って残刑執行のため巣鴨刑務所に拘束されている者らの釈放を求めた。抗告人は、右条約及び法律が憲法に違反し、これを根拠とする拘束は不当であると主張して人身保護請求を行った。
あてはめ
拘束者は、平和条約及び国内法に基づき、刑の執行を行うべき刑務所長としてその職務権限により拘束を行っている。この事実に照らせば、拘束が「権限なしに」なされ、又は「手続に著しく違反していることが顕著」であるとはいえない。抗告人の主張は根拠法令自体の違憲性を前提とするものであるが、かかる主張は同規則4条の定める救済請求の理由には該当しない。したがって、裁判所は違憲の主張に対して実体的な判断を与えるまでもなく請求を排斥できる。
結論
本件拘束が人身保護規則4条の要件を欠くことが顕著であるとはいえず、違憲の主張に対する判断を待たずに請求を棄却した原決定は正当である。
実務上の射程
人身保護法に基づく請求の要件を厳格に解し、根拠法令の違憲性という高度な法的判断を要する事項は「顕著な違反」には当たらないとする。刑事手続等、他に不服申立手段がある場合には、原則として人身保護請求は許容されないという補充性の原則とも関連する判例である。
事件番号: 昭和47(ク)116 / 裁判年月日: 昭和47年6月22日 / 結論: 却下
人身保護法による釈放の請求を排斥した決定に対しては、憲法違反を理由とするときにかぎり、最高裁判所に抗告の申立をすることができる。
事件番号: 昭和25(ク)54 / 裁判年月日: 昭和25年7月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済を求める利益は、身体の自由が回復された場合には失われるため、保釈により釈放された者は救済の利益を欠く。 第1 事案の概要:抗告人は身体を拘束されていたが、昭和25年5月31日になされた保釈決定に基づき、同日釈放された。これにより、抗告人は身体の自由を回復した。その後、人身保護法…
事件番号: 昭和45(ク)441 / 裁判年月日: 昭和46年1月25日 / 結論: 棄却
憲法は外国人の本邦への入国についてなんら規定しておらず、外国人の入国の許否は当該国家の自由裁量によつて決定しうるものとされている国際慣習法に従うことが憲法の理念に反するものではないから(最高裁昭和三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)、上陸許可の証印を受けていない外国人が、上陸審査手続のための待機場…
事件番号: 昭和28(ク)119 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告が適法となるのは、憲法違反または憲法解釈の誤りを不服理由とする場合に限られる。人身保護法に基づく事件であっても、単なる手続上の不備や事実関係の是正を求める抗告は、不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、松江刑務所における拘束の是正を求めて人身保護法に基づく請求を…