憲法は外国人の本邦への入国についてなんら規定しておらず、外国人の入国の許否は当該国家の自由裁量によつて決定しうるものとされている国際慣習法に従うことが憲法の理念に反するものではないから(最高裁昭和三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)、上陸許可の証印を受けていない外国人が、上陸審査手続のための待機場所とされたホテルから外出しえないことをもつて、憲法三四条に違反した自由の制限があるとする主張は、前提を欠き、認められない。
上陸許可の証印を受けていない外国人が待機中のホテルから外出しえない状態におかれていることと憲法三四条
憲法54条,憲法22条,出入国管理令7条,出入国管理令9条,人身保護法2条,人身保護規則3条
判旨
外国人の入国の許否は国家の自由裁量に属し、憲法上入国の自由は保障されていない。したがって、上陸許可を受けない外国人が指定場所からの外出を制限され、日本国内へ入ることができない状態は、憲法34条にいう「拘禁」には該当しない。
問題の所在(論点)
上陸許可を受けない外国人が、待機場所から日本国内へ外出することを制限されている状態が、憲法34条の「拘禁」にあたるか。また、入国の自由が憲法上保障されるか。
規範
国際慣習法上、外国人の入国の許否は当該国家の自由裁量によって決定しうる。日本国憲法は外国人の入国の自由を保障しておらず、出入国管理令が入国・上陸の条件を定め、許可なき上陸を禁止していることは憲法に反しない。したがって、上陸許可を受けない外国人が本邦内へ向けて移動することを制限されている状態は、身体の自由の制限としての「拘禁」にはあたらない。
重要事実
米国籍の抗告人は、羽田空港での上陸審査において不適合と認定された。抗告人は認定処分の取消訴訟を提起し、執行停止決定を得た。しかし、入国審査官らは上陸ないし仮上陸の許可を与えず、抗告人を上陸審査手続のための待機場所(ホテル)に滞留させた。抗告人は、ホテルから外出すれば不法上陸として収容すると通告され、滞留を余儀なくされている状態が身体の違法な拘束にあたるとして、人身保護法に基づき釈放を求めた。
事件番号: 昭和24(ク)71 / 裁判年月日: 昭和24年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続に違法があっても、それが判決に影響を及ぼさない場合には、当該判決に基づく刑の執行は正当な理由に基づく拘禁にあたり、人身保護法2条に基づく救済の対象とはならない。 第1 事案の概要:特別抗告人(被拘束者)は、適法な勾留状によらない不法な拘禁状態で公判審理が行われ、有罪判決を宣告された。この判…
あてはめ
まず、憲法上、外国人の本邦への入国の自由は保障されておらず、国家の裁量が認められる。本件において、抗告人がホテルから外出できないのは、上陸許可の証印を受けないまま本邦内に移動することを制限されているに過ぎない。国外に退去するためにホテルを離れることは制限されていない以上、この状態は「上陸許可証印のないまま本邦に上陸する自由」が認められていない状態といえる。執行停止決定がある場合でも、上陸許可がない以上は適法な上陸権限が発生するわけではない。したがって、本邦内への自由な出入りが制限されていることをもって、身体の自由を制限する「拘禁」と解することはできない。
結論
抗告人の状態は「拘禁」にあたらないため、人身保護法に基づく釈放請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
外国人の人権、特に入国の自由の存否に関するリーディングケース。入国審査手続中の待機状態が、直ちに人身保護法や憲法34条の救済対象となる「拘禁」に該当しないことを示す。マクリーン事件判決に連なる、入国に関する国家の広範な裁量を認める枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和28(ク)55 / 裁判年月日: 昭和29年4月26日 / 結論: 棄却
一 人身保護法により救済を請求することができるのは、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている場合において、その拘束又は拘束に関する裁判若しくは処分が権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著であるときに限る。 二 平和条約第一一条及び昭和二七年法律第一〇三号が憲法に違反す…
事件番号: 昭和25(ク)54 / 裁判年月日: 昭和25年7月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済を求める利益は、身体の自由が回復された場合には失われるため、保釈により釈放された者は救済の利益を欠く。 第1 事案の概要:抗告人は身体を拘束されていたが、昭和25年5月31日になされた保釈決定に基づき、同日釈放された。これにより、抗告人は身体の自由を回復した。その後、人身保護法…
事件番号: 昭和47(ク)116 / 裁判年月日: 昭和47年6月22日 / 結論: 却下
人身保護法による釈放の請求を排斥した決定に対しては、憲法違反を理由とするときにかぎり、最高裁判所に抗告の申立をすることができる。
事件番号: 平成22(許)7 / 裁判年月日: 平成22年8月4日 / 結論: 却下
人身保護法による釈放の請求を却下又は棄却した高等裁判所の決定は,許可抗告の対象とはならない。