人身保護請求に対し請求棄却の第一審判決があつた後、被拘束者が身体の自由を回復したときは、上告裁判所は、事実審の最終口頭弁論の時における事実関係に拘束されることなく、判決で上告を棄却すべきである。
人身保護請求に対し請求棄却の第一審判決があつた後被拘束者が身体の自由を回復した場合における上告裁判所の裁判
人身保護法2条1項,人身保護法11条1項,人身保護規則21条5号,人身保護規則42条,人身保護規則46条
判旨
人身保護法による救済手続において、被拘束者がすでに釈放され身体の自由を回復している場合には、救済を求める必要が消滅しているため、権利保護の利益を欠き、請求は棄却されるべきである。
問題の所在(論点)
人身保護法に基づき不当な拘束からの解放を求めている事案において、手続中に被拘束者が釈放された場合、なお同法による救済を求める権利保護の利益が認められるか。
規範
人身保護法による救済は、不当に奪われている身体の自由を迅速かつ容易に回復させることを目的とするものである。したがって、被拘束者が身体の自由を回復したときは、将来に向かって既存の法律関係を確定する実益もなく、本法による救済を求める必要(権利保護の利益)は消滅する。
重要事実
上告人(被拘束者)は、本件手続の係属中である昭和24年1月18日に保釈許可を受け、翌19日に東京拘置所を出所・釈放された。これにより、上告人は現実に身体の自由を回復するに至った。上告代理人もこの事実を認めている。
あてはめ
人身保護法の手続は、現に不当な拘束を受けている者を解放することのみを目的とする特設の救済手段である。本件において、上告人は保釈によってすでに出所・釈放されており、現に身体の自由を回復している。そうであれば、もはや同法によって身体の自由を回復させるべき対象が存在しない以上、上告理由の当否を判断するまでもなく、救済を求める必要性は失われているといえる。
結論
上告人は本法による救済を求める利益を欠くに至ったものであるから、上告を棄却する。
実務上の射程
人身保護法における権利保護の利益の存否に関する基本判例である。本法が「現になされている不当な拘束」からの解放を目的とする以上、釈放によって目的が達せられれば、手続を続行する利益が失われることを明確にしている。答案上は、身体の自由が回復した後の確認訴訟的な利用を否定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和25(ク)54 / 裁判年月日: 昭和25年7月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済を求める利益は、身体の自由が回復された場合には失われるため、保釈により釈放された者は救済の利益を欠く。 第1 事案の概要:抗告人は身体を拘束されていたが、昭和25年5月31日になされた保釈決定に基づき、同日釈放された。これにより、抗告人は身体の自由を回復した。その後、人身保護法…
事件番号: 昭和23(ク)30 / 裁判年月日: 昭和23年10月29日 / 結論: 却下
一 人身保護法による釈放の請求を排斥した決定に対しては、憲法違反を理由とするときに限り、最高裁判所に抗告の申立をすることができる。 二 昭和二三年政令第二〇一号違反の容疑により勾留された者が人身保護法により釈放を請求したのに対し、原決定が人身保護規則第四条に該当しないとの理由でこれを排斥した場合、右政令が憲法違反である…
事件番号: 昭和27(マ)79 / 裁判年月日: 昭和27年7月30日 / 結論: 棄却
戦犯者として刑が科せられた当時日本国民であり、かつ、その後引き続き平和条約発効の直前まで日本国民として拘禁されていた者に対しては、日本国は平和条約第一一条により刑の執行の事務を負い、平和条約発効後における国籍の喪失または変更は、右義務に影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和24(ク)71 / 裁判年月日: 昭和24年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留手続に違法があっても、それが判決に影響を及ぼさない場合には、当該判決に基づく刑の執行は正当な理由に基づく拘禁にあたり、人身保護法2条に基づく救済の対象とはならない。 第1 事案の概要:特別抗告人(被拘束者)は、適法な勾留状によらない不法な拘禁状態で公判審理が行われ、有罪判決を宣告された。この判…