人身保護請求に対し請求棄却の第一審判決があつた後、被拘束者が身体の自由を回復したときは、上告裁判所は、事実審の最終口頭弁論の時における事実関係に拘束されることなく、判決で上告を却下すべきである。
人身保護請求に対し請求棄却の第一審判決があつた後、被拘束者が身体の自由を回復した場合における上告裁判所の裁判
人身保護規則46条
判旨
人身保護法に基づく救済を求める訴えにおいて、被拘束者が釈放され身体の自由を回復した場合には、当該救済を求める利益(訴えの利益)は消滅する。
問題の所在(論点)
人身保護法に基づく救済を求めて上告中に、被拘束者が監置期間満了により釈放された場合、上告による救済を求める利益が存続するか。
規範
人身保護法による救済は、不当に奪われた身体の自由を回復させることを目的とするものである。したがって、被拘束者が釈放等によって身体の自由を既に回復している場合には、もはや同法による救済を求める利益(訴えの利益)は認められない。
重要事実
上告人(被拘束者)Aは、監置されていたが、昭和46年10月16日に監置期間が満了した。これにより、Aは拘束されていた神戸拘置所から出所し、釈放されたことで身体の自由を回復した。
あてはめ
本件記録によれば、被拘束者Aは既に監置期間の満了により出所釈放されており、客観的に身体の自由を回復していることが明らかである。人身保護法は現に拘束されている者の解放を目的とする手続である以上、既に自由を回復した者に対して本法による救済を継続する必要性は認められない。よって、本件においては救済を求める利益が欠けているといえる。
結論
被拘束者が釈放されたことにより救済の利益を欠くに至ったため、上告理由を判断するまでもなく、本件上告は却下される。
実務上の射程
人身保護手続の性質が事後的な権利回復ではなく、現存する身体拘束からの解放にあることを確認するものである。公法上の訴えの利益一般の議論(行政事件訴訟法における処分後の利益消滅など)と同様の論理として位置づけられる。
事件番号: 昭和25(ク)54 / 裁判年月日: 昭和25年7月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済を求める利益は、身体の自由が回復された場合には失われるため、保釈により釈放された者は救済の利益を欠く。 第1 事案の概要:抗告人は身体を拘束されていたが、昭和25年5月31日になされた保釈決定に基づき、同日釈放された。これにより、抗告人は身体の自由を回復した。その後、人身保護法…
事件番号: 昭和43(し)106 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
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事件番号: 平成24(し)506 / 裁判年月日: 平成24年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】観護措置更新決定による収容期間が既に満了している場合、当該決定の効力を争う特別抗告の申立ては、訴えの利益(抗告の利益)を失い不適法となる。 第1 事案の概要:本件は、観護措置更新決定に対する異議申立てを棄却した決定に対し、特別抗告がなされた事案である。記録によれば、当該更新決定に基づく収容期間は平…
事件番号: 昭和28(ク)119 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告が適法となるのは、憲法違反または憲法解釈の誤りを不服理由とする場合に限られる。人身保護法に基づく事件であっても、単なる手続上の不備や事実関係の是正を求める抗告は、不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、松江刑務所における拘束の是正を求めて人身保護法に基づく請求を…