判旨
裁判官のした以前の裁判上の判断が仮に誤りであったとしても、そのことのみから直ちに裁判の公正を妨げる事情があるとはいえない。
問題の所在(論点)
裁判官が過去の別事件においてなした判断(認諾の効力の否定)や、その判断に誤りがある可能性が、民事訴訟法における裁判官の忌避事由である「裁判の公正を妨げるべき事情」に該当するか。
規範
民事訴訟法上の裁判官の忌避事由である「裁判の公正を妨げるべき事情」(民訴法24条1項)とは、当事者が裁判の不公正を疑うに足りる客観的な事情が存在することをいい、単に過去の裁判において法律上の判断がなされたことや、その判断の当否のみをもって直ちにこれに該当すると解することはできない。
重要事実
抗告人は、別件の戸籍抹消請求事件において裁判長判事Dが認諾の効力を否定した判断は誤りであると主張した。その上で、本件(遺産処分同意の取消等請求事件)を審判するにつき、同一の裁判官が関与することは裁判の公正を妨げる事情があるとして忌避を申し立てた。なお、本件と別件の認諾の効力との間には何ら関連性の主張がなされていなかった。
あてはめ
まず、裁判官が過去の事件で法律上の判断を下した事実は、職務上の正当な行為であり、その内容の当否が争われるとしても、直ちに裁判官の公正を疑わせる客観的事情とはいえない。また、本件においては、過去に判断を下した別事件と現在審理中の遺産処分に関する事件との間に、認諾の効力を巡る論理的な関連性も認められない。したがって、単に過去の判断に不服があるという主観的な事情や、別個の事件での判断を理由とするだけでは、公正を妨げる事情の疎明として不十分である。
結論
本件裁判官に「裁判の公正を妨げるべき事情」があるとは認められず、忌避の申し立ては認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(ク)144 / 裁判年月日: 昭和26年2月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行336条1項)に規定する憲法判断の不当を理由とする抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して民事事件の抗告を申し立てた事案。しかし、その抗告理由におい…
裁判官の忌避における「公正を妨げるべき事情」の限定解釈を示す。裁判官が以前に示した法律的見解や、他事件での訴訟指揮・判断の当否は、それ自体では忌避事由にならないことを強調する際の根拠となる。
事件番号: 昭和25(ク)42 / 裁判年月日: 昭和25年6月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかの判断を不当とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人等が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定における憲法判断の不当性を指摘するものではなかった。…
事件番号: 昭和25(ク)78 / 裁判年月日: 昭和25年7月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】本案訴訟について日本の裁判所に裁判権がない場合、その裁判に関与する裁判官に対する忌避の申立てについても裁判権は認められず、裁判所は申立書を却下すべきである。 第1 事案の概要:抗告人は、法務総裁が行った解散団体の財産管理等に関する指定の取消しを求めて東京地方裁判所に提訴し、あわせて当該訴訟に関与す…
事件番号: 昭和45(ク)191 / 裁判年月日: 昭和45年9月29日 / 結論: 棄却
民訴法三七条にいう忌避の原因となるべき「裁判官二付裁判ノ公正ヲ妨クヘキ事情アルトキ」とは、裁判官と具体的事件との間に客観的に公正な裁判を期待しえないような人的、物的に特殊な関係がある場合をいい、具体的事件と直接無関係な裁判官としての適格性、行状、思想、単なる法律上の見解等に関する一般的事由は、忌避の原因を構成しないと解…
事件番号: 昭和26(ク)35 / 裁判年月日: 昭和26年5月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法適合性に関する判断の不当を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その抗告理由は、原決定における憲法解釈の不当を指摘するもの…