判旨
当事者間に契約の実体(意思表示)が全く存在しない場合、無効な行為の追認を認める余地はなく、存在しない契約の効力を認める旨の判示は理由不備または弁論主義違反として違法となる。
問題の所在(論点)
契約の実体が全く存在しない場合に、その「追認」によって効力を認めることができるか。また、当事者が主張していない「権利の発生を基礎づける事実」を裁判所が認定することは許されるか。
規範
法律行為が成立するためには、当事者間の合意(意思表示の合致)が必要である。契約の実体が全く存在しない場合には、無効な行為の追認という概念は適用されず、後発的にその効力を認めることはできない。また、裁判所は当事者が主張しない事実に基づいて判決の基礎としてはならない(弁論主義の第一命題)。
重要事実
Dが所有していた土地につき、長男EがDの不在中に印章を盗用して売買証書を偽造し、自己への所有権移転登記を了した。その後、EからFへ家督相続、FからGへ売買、Gから被上告人等へ遺産相続がなされたとして、被上告人等が所有権を主張。これに対し、上告人等はD・E間の売買は存在せず、以降の取得も無効と主張した。原審は、Dが出獄後に「売買による所有権移転を認めた」との事実を認定して被上告人等の請求を認めたが、この事実は当事者のいずれも主張していなかった。
あてはめ
D・E間では、EがDの印を盗用して登記を移転させただけで、売買契約の意思表示は全く存在しなかった。契約自体が存在しない以上、後から「追認」して効力を生じさせることは理論上不可能である。原審が「Dが右売買を認めた」とした判示は、存在しないものの効力を認めるものであり意義不明である。さらに、この事実は当事者が主張していないものであり、弁論主義に反する。仮に新たな行為(贈与等)があったとしても、その具体的な法的性質や当事者の主張が欠けている。
結論
契約が全く存在しない場合には追認の余地はなく、また当事者の主張しない事実に基づき所有権移転を肯定した原判決には、理由不備および弁論主義違反の違法がある。
実務上の射程
契約の「不存在」と「無効」を区別し、不存在の場合には追認(民法119条等)の適用がないことを示す。答案上は、弁論主義違反の典型例(主要事実の不主張)として、または意思表示の欠如による契約の不成立を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)71 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
一 土地の使用収益をなすべき契約上の債権に基き、第三者に対し直接妨害排除の請求をすることはできない。 二 仮処分申請を理由なしとして却下した以上、保証を立ててもなお仮処分を命ずべからずと判断したものと解すべきである。
事件番号: 昭和27(オ)191 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の不存在という単なる事実の確認を求める訴えは、書面成立の真否等の明文がある場合を除き適法ではないが、これを所有権の帰属という法律関係の確認を求める趣旨と解釈して審理することは許される。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、被上告人(被告)に対し、本件不動産につき売買契約が存在しないことの確…