判旨
確認の訴えの対象は原則として現在の法律関係に限られ、証書(書面)そのものの無効という事実関係の確認を求める訴えは、法律に別段の規定がない限り不適法である。
問題の所在(論点)
証書(書面)そのものの無効確認を求める訴えが、確認の訴えの対象(民事訴訟法上の「法律関係」)として適法か。
規範
確認の訴えは、原則として現在の法律関係を対象とすべきものである。証書(書面)そのものが無効であるという主張は、事実関係の存否を争うものにすぎず、法律関係自体を対象とするものではない。したがって、書面の成立の真否を求める場合(旧民訴法225条、現行民訴法134条)のような特段の法的規定がない限り、事実関係の確認を求める訴えは提起できない。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人から交付された農地買収令書について、当初は買収処分の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟手続中に行政側が令書を修正し、取消しの目的が実質的に達せられたため、上告人は訴えを変更。買収令書に「訴訟法上の実体的証拠力」がないことを理由に、当該令書(証書)の無効確認を求める訴えへと切り替えた。
あてはめ
本件で上告人が求めているのは、買収令書という証書そのものの無効確認である。これは事実関係の確認にほかならず、法律関係自体の存否を求めるものではない。また、上告人の主張は「証書の成立の真否」を問うものでもなく、単に証書の無効(証拠力の欠如等)を主張するものである。このように、法律に別段の定めがない事実関係の確認を求める訴えは、確認の利益を欠き、不適法といわざるを得ない。
結論
証書そのものの無効確認を求める訴えは、事実関係の確認を求めるものであり、不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…
確認の訴えにおける「対象の適格」を論じる際の基本判例である。原則として「現在の法律関係」に限られること、および「証書の真否を求める訴え」(民訴法134条)が例外規定であることを示す文脈で使用する。事実の確認を求める訴えが原則として許されない理由を説明する際に有用である。
事件番号: 昭和35(オ)248 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
行政処分無効確認訴訟は国家賠償請求の目的で提起されたものであるからといつて、処分庁が右処分を取り消した後においても、なおその法律上の利益があるということはできない。
事件番号: 昭和26(オ)496 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の名宛人を死亡した前所有者とした瑕疵がある場合でも、当然に無効となるわけではなく、不服申立期間内に取消しを求めない限り、当該処分は有効に確定する。 第1 事案の概要:農地委員会がDを不在地主として農地の買収計画を樹立し、県知事がDに対し買収決定を行った。しかし、Dは買収計画樹立前に既に死亡…
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…