行政処分無効確認訴訟は国家賠償請求の目的で提起されたものであるからといつて、処分庁が右処分を取り消した後においても、なおその法律上の利益があるということはできない。
行政処分無効確認訴訟提起後に右処分が取り消された場合と訴の利益。
行政事件訴訟特例法1条,国家賠償法1条
判旨
行政処分の無効は、その瑕疵が重大かつ明白である場合に限られる。また、処分が既に取り消された場合、国家賠償請求が可能であることを理由に、当該処分の無効確認を求める法律上の利益は認められない。
問題の所在(論点)
1. 強行法規に違反する行政処分は当然に無効となるか。2. 行政処分が既に取り消された後、国家賠償請求の前提とするために当該処分の無効確認を求める訴えの利益(法律上の利益)は認められるか。
規範
行政処分の当然無効は、処分の根拠法規が強行法規であるからといって直ちに認められるものではなく、その違背が重大かつ明白である場合に限り認められる。また、行政処分が違法であることを理由とする国家賠償請求において、あらかじめ当該行政処分の取消や無効確認の判決を得る必要はない。
重要事実
D農地委員会は自作農創設特別措置法に基づき本件買収計画を樹立したが、買収令書の交付前に買収申請の取り下げがあったため、同計画を取り消す旨の決議及び公告を行った。これに対し上告人は、当該買収計画の無効確認を求めて出訴した。上告人は、買収要件を定めた規定が強行法規であることや、本訴が国家賠償請求を目的とするものであることを理由に、訴えの利益を主張した。
事件番号: 昭和38(オ)348 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
行政処分の無効を主張するについては、当該行政処分に重大かつ明白な瑕疵があることを具体的事実に基づいて主張すべきである。
あてはめ
1. 行政処分の公定力に鑑み、無効原因は「重大かつ明白」な瑕疵に限定されるべきであり、強行法規違反が直ちに無効をもたらすわけではない。2. 本件買収計画は既に取り消されており、初めに遡ってその存在を失っている。国家賠償請求は行政処分の取消・無効判決を得ずとも提起可能であるから、賠償請求の目的をもって処分の無効確認を求めることは、訴えの利益を基礎付ける理由として不十分である。
結論
本件買収計画の無効確認を求めるにつき法律上の利益を欠くため、訴えは不適法として却下される。
実務上の射程
行政事件訴訟における「重大明白説」のリーディングケースであるとともに、処分後の訴えの利益の有無、および国家賠償請求と行政訴訟の自由選択(先行処分の取消不要論)を端的に示した重要判例である。答案上は、無効確認訴訟の「重大明白」要件の提示や、訴えの利益の有無を論じる際の論拠として使用する。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和36(オ)1253 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
右誤認が原審認定の事情のもとで明白な瑕疵とはいえない以上、買収処分は違法であつても、無効ではない。
事件番号: 昭和42(行ツ)79 / 裁判年月日: 昭和45年2月17日 / 結論: 棄却
民法一八五条にいう「新権原」の発生を主張するについて、占有者は、その取得につき登記その他の対抗要件を必要としない。 (参考) 一審、札幌地裁昭和三五年(行)第七号、同年(ワ)第三〇八号 昭和四〇年九月二四日判決(訟務月報一二巻二号二六七頁)