所有者において工場用地とするため既往の水田に地盛りを施して宅地に造成し、何びとにもこれを賃貸したことなく空地にしておいた土地で、戦時中その一部が所有者の承諾もなく家庭菜園に利用されていたと認められるものは、自作農創設特別措置法第三条にいう農地にあたらない。
自作農創設特別措置法にいう農地にあたらないと認められた事例
自作農創設特別措置法2条,自作農創設特別措置法3条
判旨
行政処分が当然無効となるためには、処分に重大な瑕疵があり、かつ、その瑕疵が客観的に明白であることを要する。農地法に基づく買収処分において、対象地が客観的形状からして明らかに宅地化しており、何人も容易にそれを看取できる状態にあった場合は、処分の対象を誤認した重大かつ明白な瑕疵があるものとして無効となる。
問題の所在(論点)
農地法(自作農創設特別措置法)に基づく買収処分において、対象が農地ではない土地(宅地)であった場合に、その瑕疵が「重大かつ明白」として処分が当然無効となるか。
規範
行政処分が当然無効とされるためには、当該処分に重大な瑕疵が存在し、かつ、その瑕疵が客観的に明白であることを要する。処分の対象となる物件の性質(農地か否か等)に関する誤認がこの要件を満たすか否かは、当時の客観的な形状や状況に基づき、何人にとってもその誤認が容易に看取できる状態にあったか否かによって判断される。
重要事実
本件土地は、所有者が工場用地とする目的で元々の水田に地盛りを施し、宅地として造成したものであった。戦時中に一部が家庭菜園として利用されていたものの、それは一時的な休閑地利用に過ぎなかった。農地委員会が買収当時、現地を調査した際にも地盛りされ休閑地状態にあることを現認していた。しかし、処分庁は本件土地を農地として買収処分を行ったため、元所有者が処分の無効を訴えた。
事件番号: 昭和41(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和42年7月21日 / 結論: 棄却
地方公共団体の技術吏員は、知事から、その権限に属する事務の一部を特定して、委任をうけ、または授権された場合にかぎり、自己の名においてまたは知事を代理して、知事の権限を行使することができる。
あてはめ
本件土地は、所有者により宅地造成がなされ、客観的形状において隣接農地と比較しても宅地化していたといえる。この事実は、現地を調査した農地委員会においても現認できるものであり、何人にとっても容易に看取できる状態にあった。したがって、農地でない土地を農地として買収した処分庁の誤認は、客観的に明白な瑕疵にあたると評価される。また、本来買収権限のない土地を対象とした点において重大な瑕疵も認められる。
結論
本件買収処分には重大かつ明白な瑕疵があるため当然無効であり、土地の所有権は依然として元所有者に帰属する。
実務上の射程
行政処分の無効事由としての「重大明白説」を個別具体的な事案に適用する際の指針となる。特に物件の属性誤認について、外形的・客観的な状況から容易に判断可能であったかという「明白性」の判断基準を示すものであり、実務上、公定力の排除を主張する場面で活用される。
事件番号: 昭和32(オ)975 / 裁判年月日: 昭和33年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が法規の重要な部分に違反し、かつ客観的に明白であることを要するが、農地法上の買収処分において、対象地が客観的に農地ではなく宅地であること等の事情が明白であれば、当該処分は当然無効となる。 第1 事案の概要:土地所有者である控訴人が、元々一筆の宅地であった…
事件番号: 昭和36(オ)1253 / 裁判年月日: 昭和38年3月1日 / 結論: 棄却
右誤認が原審認定の事情のもとで明白な瑕疵とはいえない以上、買収処分は違法であつても、無効ではない。
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…