判旨
代物弁済予約に基づき債権者が所有権移転の仮登記をすることは、特約のない限り、不動産登記法上認められた適法な権利保全行為であり、債務者の金融を妨げる不当な行為には当たらない。
問題の所在(論点)
代物弁済の予約に基づく所有権移転の仮登記が、債務不履行前になされた場合、その行為は債務者の資金調達を不当に妨げる違法な行為となるか。特に「仮登記をしない旨の特約」がない場合の判断基準が問題となる。
規範
債務者所有の不動産につき代物弁済を予約した債権者が、債務不履行前に当該予約に基づく所有権移転の仮登記をすることは、権利保全のために登記法上認められた行為である。したがって、仮登記をしない旨の特約がない限り、かかる仮登記の完了をもって債務者の金融(資金調達)を妨げたものと解することはできない。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者(上告人)所有の建物につき代物弁済の契約(予約)を締結した。債権者は、金銭債務の不履行が発生する前の段階で、当該予約に基づき所有権移転の仮登記を経由した。これに対し債務者は、仮登記がなされたことにより他からの資金調達(金融)が困難になったとして、当該仮登記が不当である旨を主張した。なお、当事者間に「仮登記をしない」という特約が存在した事実は、原審において主張されていなかった。
あてはめ
本件において、債権者が行った仮登記は、将来の代物弁済による所有権移転に備えた権利保全の手段として、不動産登記法上正当に認められた手続である。債務者は、この仮登記が金融の障害となった旨を主張するが、特定の金融業者(D株式会社)が仮登記のある物件を忌避するという個別的な事情があるとしても、それが一般の金融業者間の共通認識であるとは認められない。また、当事者間に仮登記を禁止する特約や、金融の障害となる負担を課さない旨の特約があったとも認められない。したがって、適法な権利行使である仮登記が、債務者の金融を妨げたという法的評価を与えることはできない。
結論
代物弁済予約に基づく仮登記は、特約のない限り適法な権利保全行為であり、債務者の金融を妨げたものとはいえない。上告棄却。
事件番号: 昭和36(オ)1219 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
権利取得が仮処分登記前であつても、権利取得登記が仮処分登記後になされたときは、権利取得者は、右権利取得を以て仮処分債権者に対抗し得ない。
実務上の射程
予約完結権行使前の仮登記の適法性を確認した事案である。答案上では、担保権の設定や仮登記が債務者の経済活動を制約したとしても、それが法的に認められた手続である以上、特約等の特段の事情がない限りは正当な権利行使として扱われることを説明する際の根拠となる。民法上の不法行為の成否や、信義則違反の有無を検討する場面での射程が想定される。
事件番号: 昭和25(オ)122 / 裁判年月日: 昭和28年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の譲受人は、登記を欠いている場合、不法占拠者に対しては所有権を主張できるが、正当な占有権原に基づき占有する者に対しては、特段の事情がない限り、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する「第三者」に該当するため、所有権を対抗できない。 第1 事案の概要:上告人(原告)の先代Eは、Dから本件家屋を買…
事件番号: 昭和23(オ)76 / 裁判年月日: 昭和25年4月12日 / 結論: 棄却
憲法第二五条第一項は、自由な意志に基いて締結した契約により家屋明渡の債務を負担する者に対し、裁判所がその契約の履行として家屋明渡を命ずることを禁ずるものではない。