判旨
内閣総理大臣の異議があった場合でも、裁判所が執行停止を取消すのは異議に拘束されたためではなく、停止を維持することが適当でないと裁判所自身が認めたためであると解すべきであり、その判断において異議申立規定の違憲性を審査する必要はない。
問題の所在(論点)
行政事件において、裁判所の執行停止決定に対し内閣総理大臣が異議を述べた場合に、裁判所がこれに従って執行停止を取り消すことは、司法権の独立を保障する憲法に違反するか。また、その際に異議申立規定自体の違憲性を判断する必要があるか。
規範
行政事件訴訟特例法10条(現行行政事件訴訟法27条等に相当)に基づく内閣総理大臣の異議が申し立てられた場合、裁判所はその異議に形式的に拘束されるのではなく、異議が出されたという事態を踏まえ、当該執行停止を維持することが適当であるか否かを独立して判断するものと解される。
重要事実
大阪地方裁判所は学校閉鎖命令の執行停止を決定していたが、内閣総理大臣から適法な異議の申立てがなされたことを受け、同法10条6項に基づき当該執行停止決定を取り消した。これに対し申立人は、内閣総理大臣の異議により裁判所の判断を拘束することは司法権の独立を侵し憲法に違反するとして特別抗告を申し立てた。
あてはめ
原審が「内閣総理大臣から適法の異議の申立があったので」執行停止決定を取り消した旨の説明をしているのは、異議の存在によって裁判所の判断が自動的に拘束されたことを意味するものではない。これは、内閣総理大臣からの異議という重大な事実が存する以上、本件学校閉鎖命令の執行を停止し続けることは不適当であると裁判所が自ら認め、法に基づき取消しを行ったと解するのが相当である。このように裁判所独自の判断として取消しが行われている以上、その前提となる異議申立規定の違憲性をあえて判断する必要はない。
結論
本件執行停止の取消しは、裁判所が異議申立を受けて停止不適当と判断した結果であり、適法である。したがって、本件抗告を棄却する。
事件番号: 昭和25(ク)57 / 裁判年月日: 昭和25年7月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、原決定に憲法違反の判断が含まれる場合に限られ、通常の再抗告規定は適用されない。 第1 事案の概要:抗告人等が、下級審の決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告状の記載によれば、その抗告理由は原決定における憲法適合性の判断を不当とするも…
実務上の射程
内閣総理大臣の異議(現行行訴法27条)の法的性質について、司法権の独立との整合性を図る際の解釈指針として用いられる。ただし、本判決は回避的であり、現行法下の実務や学説では「異議があれば裁判所は執行停止をすることができず、既にした決定は取り消さなければならない」とする拘束的効力を認めるのが一般的である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(ク)75 / 裁判年月日: 昭和25年9月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に対する裁判権を有するのは、法律で特に許容された場合に限定され、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする抗告(旧民訴法419条の2)のみが適法な抗告として認められる。 第1 事案の概要:抗告人等が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告理由は、原決定における憲法…
事件番号: 昭和25(ク)47 / 裁判年月日: 昭和25年5月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法が特に定めた場合に限られる。民事事件においては、原決定の憲法適合性に関する判断を不当とする理由(旧民訴法419条の2)が必要であり、単なる法令違背を理由とする抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案で…
事件番号: 昭和24(ク)85 / 裁判年月日: 昭和25年3月14日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に認められた場合に限定され、民事事件においては憲法違反の判断を不当とする特別抗告のみが許容される。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、憲法違反に関する判断を不当とするも…
事件番号: 昭和25(ク)26 / 裁判年月日: 昭和25年5月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が下した決定に対しては、更に抗告を申し立てることは許されない。 第1 事案の概要:抗告人は、最高裁判所がなした決定に対し、旧民事訴訟法411条を根拠として更に抗告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):最高裁判所がなした決定に対して、更に抗告を申し立てる(再抗告等を行う)ことが認められ…