判旨
借地借家調停事件において裁判所が調停に代わる裁判として家屋の明渡等を命じることは、憲法22条に直接抵触するものではなく、その適否は法律の解釈適用の問題にすぎない。
問題の所在(論点)
裁判所が調停に代わる裁判として家屋の明渡を命じることが、憲法22条(居住移転・職業選択の自由)に違反する憲法問題を生じさせるか。また、単なる法規適用の不服を憲法違反として主張することの適法性。
規範
当裁判所に対する抗告の申立ては、原決定の憲法適否に関する判断に関するものに限り許される。単なる法令の解釈適用の不当を憲法違反と主張するものは、実質において憲法違反の主張に該当せず、不適法な抗告となる。
重要事実
借地借家調停事件において、調停が成立しなかった。原審は、金銭債務臨時調停法7条の規定を準用する戦時民事特別法19条2項に基づき、調停に代わる裁判として抗告人に対し係争家屋の一部の明渡等を命じた。これに対し抗告人は、当該決定が憲法22条の居住移転の自由等を剥奪するものであるとして、憲法違反を理由に抗告した。
あてはめ
戦時民事特別法19条2項は、調停不成立の場合に債務関係の変更や家屋の明渡を命じうる旨を明定している。原審が同法規に従って明渡を命じたことは、当該法規自体の違憲性を主張する場合を除き、単なる法規の解釈適用の相当性の問題に帰する。したがって、居住移転の自由の侵害をいう主張は、単に結論の不当を憲法違反という名に藉りているに過ぎない。
結論
本件抗告理由は実質において憲法違反の主張に該当せず、本件抗告は不適法として却下される。
実務上の射程
憲法訴訟における「実質的違憲主張の欠如」による門前払いの論理を示す。単なる裁判結果への不満を人権侵害という言葉で表現しても、根拠となる法規範自体の違憲性を問わない限り、上告・抗告理由としての憲法違反には当たらないという実務上の峻別基準として機能する。
事件番号: 昭和24(ク)52 / 裁判年月日: 昭和31年10月31日 / 結論: 棄却
家屋明渡請求訴訟事件につき、戦時民事特別法第一九条第二項、金銭債務臨時調停法第七条第一項によつてなされた調停に代わる裁判は、憲法第一一条、第一三条、第二二条、第二五条、第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和25(ク)10 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法第419条の2(現行336条)に基づき、原決定における憲法適合性の判断の不当を理由とする場合に限られ、その他の理由は認められない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対して最高裁判所への抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由において、原決定が法律、命令、規則又…
事件番号: 昭和26(ク)213 / 裁判年月日: 昭和26年11月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律が特に認めた場合に限られ、旧民訴法419条の2に基づく憲法判断の不当を理由とする抗告のみが適法となる。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。しかし、その抗告理由は、原決定において法律、命令、規則又は処分が憲法に…
事件番号: 昭和25(ク)55 / 裁判年月日: 昭和25年9月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、法律により特に認められた場合に限り許され、民事事件においては原決定における憲法判断の不当を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その申立理由において、原決定に憲法違反があることや、原決定が憲法に適合するか否…
事件番号: 昭和25(ク)63 / 裁判年月日: 昭和25年9月5日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、特別の定めがある場合に限られ、その抗告理由は原決定における憲法判断の不当性に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由において、原決定における憲法判断の不当性については主張されてい…