家屋明渡請求訴訟事件につき、戦時民事特別法第一九条第二項、金銭債務臨時調停法第七条第一項によつてなされた調停に代わる裁判は、憲法第一一条、第一三条、第二二条、第二五条、第三二条に違反しない。
調停に代わる裁判の合憲性
戦時民事特別法(昭和17年法律63号)19条2項,金銭債務臨時調停法(昭和7年法律26号)7条1項,憲法11条,憲法12条,憲法13条,憲法22条,憲法25条,憲法32条,憲法82条
判旨
調停に代わる裁判は、裁判所という機関によってなされる裁判であり、抗告等の不服申立の途も開かれているため、裁判を受ける権利(憲法32条)や公開原則(同82条)に違反しない。
問題の所在(論点)
当事者の合意に基づかない「調停に代わる裁判」制度において、非公開の決定手続により確定判決と同一の効力を認めることが、憲法32条(裁判を受ける権利)および憲法82条(裁判の公開)に違反しないか。
規範
憲法32条の保障する「裁判を受ける権利」は、裁判所でない他の機関によって裁判されることを禁じる趣旨である。また、憲法82条の公開原則は、対審および判決の手続による裁判について適用されるものであり、それ以外の裁判(決定手続等)を常に公開で行うことまでを要求するものではない。
重要事実
家屋明渡請求訴訟の係属中、戦時民事特別法に基づき職権で借地借家調停に付された。調停不成立となったため、簡易裁判所は金銭債務臨時調停法に基づき、職権で「調停に代わる裁判(決定)」を行い、家屋明渡等を命じた。抗告人は、本制度が公開の対審を経ずに確定判決と同一の効力を付与するものであり、裁判を受ける権利や公開原則等に違反するとして特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和24(ク)54 / 裁判年月日: 昭和25年4月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】借地借家調停事件において裁判所が調停に代わる裁判として家屋の明渡等を命じることは、憲法22条に直接抵触するものではなく、その適否は法律の解釈適用の問題にすぎない。 第1 事案の概要:借地借家調停事件において、調停が成立しなかった。原審は、金銭債務臨時調停法7条の規定を準用する戦時民事特別法19条2…
あてはめ
(1)本件調停に代わる裁判は、裁判所という正当な司法機関によって行われており、かつ抗告・再抗告・特別抗告といった上訴の機会が保障されている。したがって、裁判を受ける権利の行使を不当に妨げたとはいえない。(2)憲法82条が公開を要求するのは「対審および判決」の手続である。本件の調停に代わる裁判は、決定手続によってなされるものであり、対審・判決の手続そのものではないため、非公開で行われたとしても直ちに憲法違反となるわけではない。
結論
本件調停に代わる裁判およびこれを維持した原決定は、憲法32条、82条その他の憲法条項に違反しない。したがって、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
司法審査の対象となる「裁判」の範囲と、決定・命令手続における公開原則の不適用を論じる際の基礎となる。ただし、現在の民事調停法における「調停に代わる決定」は異議申し立てにより効力を失う(同法18条)制度となっており、本判決が対象とした強力な効力(異議不可・確定判決と同一の効力)を持つ旧法下の制度とは実務上の位置づけが異なる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(ク)109 / 裁判年月日: 昭和35年7月6日 / 結論: 破棄差戻
戦時民事特別法第一九条第二項、金銭債務臨時調停法第七条に従い、純然たる訴訟事件についてなされた調停に代わる裁判は、右第七条に違反するばかりでなく、同時に憲法第八二条、第三二条に照らし違憲たるを免れない。
事件番号: 昭和40(ク)328 / 裁判年月日: 昭和42年3月6日 / 結論: 棄却
民訴法第四一九条ノ二、裁判所法第七条第二号の規定は、憲法第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和63(ク)304 / 裁判年月日: 昭和63年10月6日 / 結論: 棄却
民事執行法八三条による引渡命令の裁判は、憲法三二条、八二条に違反しない。