判旨
憲法32条は国民が裁判所において裁判を受ける権利を保障するものであって、審級制度の内容を規定するものではない。したがって、特別の規定がある場合を除き最高裁判所への抗告を認めない裁判所法7条2号の規定は、憲法32条に違反しない。
問題の所在(論点)
審級制度(特に最高裁判所への抗告の制限)について法律で定めることは、憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」を侵害し違憲となるか。
規範
審級制度は、憲法81条が定める場合を除き、立法府が適宜に定めうる事項である。また、憲法32条は、すべての国民が裁判所においてのみ裁判を受け、裁判所以外の機関によって裁判をされないことを保障するものであり、審級制度をいかに定めるかという点(上訴権の保障等)についての規定ではない。
重要事実
抗告人は、下級裁判所が下した決定に対し、最高裁判所への抗告(再抗告)を申し立てた。しかし、裁判所法7条2号は、最高裁判所が抗告を受理するのは「訴訟法において特に定める」場合に限られるとしている。当時の民事訴訟法等によれば、最高裁判所への抗告が認められるのは原決定に憲法判断の不当がある場合に限定されていた。抗告人は、このような制限は裁判を受ける権利を保障した憲法32条に違反すると主張した。
あてはめ
憲法32条の趣旨は「裁判所によらない裁判」を禁止することにあり、特定の不服申立て手段を保障するものではない。審級制度は立法政策に委ねられた事項である。したがって、裁判所法7条2号が、訴訟法で特に定める場合を除き最高裁判所の管轄から抗告を除外していることは、憲法の認める立法府の裁量の範囲内である。本件において、抗告人の申立ては原決定に憲法適否の判断が含まれる場合(当時の民訴法419条の2等)に該当しないため、不適法な申立てと解される。
結論
最高裁判所への抗告を制限する規定は憲法32条に違反せず、本件抗告は不適法として却下される。
事件番号: 昭和34(ク)321 / 裁判年月日: 昭和34年10月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】裁判所の権限や審級の定めは原則として立法政策に委ねられており、最高裁判所への抗告権を訴訟法上特定の事由に限定する裁判所法7条2号等は、憲法32条、76条1項、77条1項に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人らは、最高裁判所の裁判権に関する規定である裁判所法7条2号が憲法76条1項および77条1項…
実務上の射程
憲法32条が「審級の利益」を直接保障するものではないことを示すリーディングケースである。答案上では、上訴権の制限や審級の省略が争点となる場面で、立法府の広範な裁量を肯定する根拠として引用する。ただし、憲法81条に基づき最高裁判所が終審裁判所であること自体は否定できない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和28(ク)154 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告に対して裁判権を有するのは、原決定における憲法解釈の誤りを主張する場合(旧民訴法419条の2)に限られる。単なる手続違背の主張は、憲法違反の主張には当たらず、最高裁判所に対する適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定が「国民の人権を無視し憲法違反であ…
事件番号: 昭和24(ク)24 / 裁判年月日: 昭和24年8月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合を除いては、これをすることができない。特別抗告(民訴法419条の2、現行336条1項)は憲法の判断が不当であることを理由とする場合に限られ、それに該当しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、下級裁判所の決…
事件番号: 昭和25(ク)42 / 裁判年月日: 昭和25年6月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかの判断を不当とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人等が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定における憲法判断の不当性を指摘するものではなかった。…
事件番号: 昭和26(ク)235 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、民事事件においては特別抗告(現民訴法336条1項)が認められる場合に限られる。また、その抗告理由は原決定における憲法判断の不当性を主張するものに限定され、単なる事実誤認の主張は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原審の決定に対し、憲法32条(裁判…