判旨
最高裁判所が民事事件の抗告に対して裁判権を有するのは、原決定における憲法解釈の誤りを主張する場合(旧民訴法419条の2)に限られる。単なる手続違背の主張は、憲法違反の主張には当たらず、最高裁判所に対する適法な抗告理由とならない。
問題の所在(論点)
最高裁判所に対する民事抗告において、具体的な憲法条項の指摘を欠き、実質的に手続違背を主張するにとどまる申立てが、適法な抗告理由(憲法違反の主張)として認められるか。
規範
最高裁判所が抗告について裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限定される。民事事件においては、原判決(決定)における法律・命令・規則・処分の憲法適合性に関する判断の不当を理由とする場合に限り、適法な抗告理由となる(旧民訴法419条の2)。
重要事実
抗告人は、原決定が「国民の人権を無視し憲法違反である」と主張して最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、当該主張は、具体的に憲法のどの条項に違反するかを明示するものではなく、その実質的な内容は裁判手続上の違背を指摘するものであった。
あてはめ
本件抗告理由は、原決定が憲法違反である旨の文言を用いているものの、具体的な憲法条項の違反を明らかにしていない。また、その主張の実質は単なる手続上の不備を指摘する「手続違背」にすぎない。これは、旧民訴法419条の2が定める「憲法適合性に関する判断の不当」という限定的な抗告理由には該当せず、旧民訴法413条の適用による広範な抗告理由の主張も認められない。
結論
本件抗告は、適法な抗告理由を欠く不適法なものとして却下される。
実務上の射程
最高裁への特別抗告・許可抗告の場面において、単なる事実誤認や法令違反を「憲法違反」という言葉で包摂しても、具体的条項の指摘や実質的な憲法問題の提示がなければ不適法とされる実務上の指針となる。
事件番号: 昭和25(ク)42 / 裁判年月日: 昭和25年6月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかの判断を不当とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人等が、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定における憲法判断の不当性を指摘するものではなかった。…
事件番号: 昭和28(ク)176 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特別の定めがある場合に限られ、民事事件においては憲法適合性の判断に関する不服申し立て(特別抗告)のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人等が、下級審の決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた。抗告人は、原決定(下級審の判断)が憲法に適合…
事件番号: 昭和28(ク)179 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告申立てが許容されている場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人等は、最高裁判所に対して抗告を申し立てた。当該申立ては、抗告申立書の記載自体から、民事訴訟法(旧法)413条に基づくものであることが明らかであった。 第…
事件番号: 昭和28(ク)260 / 裁判年月日: 昭和28年11月20日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】憲法76条3項にいう裁判官の「良心」とは、裁判官が有形無形の外部の圧迫または誘惑に屈しないで、自己内心の良識と道徳感に従うことを意味する。最高裁判所への抗告が適法となるためには、原決定における憲法解釈の不当性を理由とする必要がある。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所の決定に対して最高裁判所に抗…
事件番号: 昭和28(ク)221 / 裁判年月日: 昭和28年9月30日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告理由は、憲法適合性に関する判断の不当性を主張するものに限られ、単なる事実誤認や独自の憲法解釈を前提とした判断の非難は適法な理由に当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判官に裁判の公正を妨げる事情が認められないとした原決定に対し、最高裁判所に抗告を申し立てた。抗告人はその…