判旨
憲法76条3項にいう裁判官の「良心」とは、裁判官が有形無形の外部の圧迫または誘惑に屈しないで、自己内心の良識と道徳感に従うことを意味する。最高裁判所への抗告が適法となるためには、原決定における憲法解釈の不当性を理由とする必要がある。
問題の所在(論点)
1. 憲法76条3項にいう「良心」の意義は、裁判官の主観的・個人的な信念を指すのか、それとも外部からの独立性を指すのか。2. 最高裁判所に対する抗告において、憲法違反の主張が不適法となる基準は何か。
規範
憲法76条3項に規定される裁判官の「良心」とは、裁判官が外部からのいかなる圧迫や誘惑(有形無形を問わない)にも屈することなく、自己の内心における純粋な良識および道徳感に従って職務を遂行することを指す。また、最高裁判所が抗告裁判権を有するのは、法律により特に許容された場合に限られ、民事事件においては原決定の憲法適合性に関する判断の不当性を理由とするもの(特別抗告)でなければならない。
重要事実
抗告人は、原裁判所の決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた。その抗告理由の中で、原決定が憲法76条3項に違反すると主張したが、その具体的な内容は、裁判官が外部の圧力に屈したといった特段の事情を論理的に基礎付けるものではなかった。原決定の憲法解釈自体を争う形式をとってはいるものの、実質的には憲法違反の要件を満たさない理由が含まれていた事案である。
あてはめ
憲法76条3項の「良心」は、裁判官が外部の圧迫や誘惑に抗い、内心の良識に従うという職務上の独立を意味するものである。本件において、抗告人は原決定に憲法76条3項違反があると主張するが、記録を精査しても、裁判官が外部からの不当な影響を受けて自己の良識に反する裁判を行った事実は認められない。したがって、抗告人が主張する事由は、実質的に憲法適合性の判断を不当とするものとはいえず、特別抗告の適法な理由を構成しない。
結論
本件抗告は適法な理由を欠くため、不適法として却下される。
事件番号: 昭和28(ク)154 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告に対して裁判権を有するのは、原決定における憲法解釈の誤りを主張する場合(旧民訴法419条の2)に限られる。単なる手続違背の主張は、憲法違反の主張には当たらず、最高裁判所に対する適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定が「国民の人権を無視し憲法違反であ…
実務上の射程
司法権の独立(憲法76条3項)に関する定義として、答案上「良心」の意義を書く際に引用する。また、最高裁への特別抗告において、単なる憲法条文の引用だけでは足りず、憲法判断の不当性を具体的に示す必要があるという訴訟法上の論点(民事訴訟法336条等の解釈)と結びつけて活用される。
事件番号: 昭和28(ク)176 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特別の定めがある場合に限られ、民事事件においては憲法適合性の判断に関する不服申し立て(特別抗告)のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人等が、下級審の決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた。抗告人は、原決定(下級審の判断)が憲法に適合…
事件番号: 昭和28(ク)221 / 裁判年月日: 昭和28年9月30日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告理由は、憲法適合性に関する判断の不当性を主張するものに限られ、単なる事実誤認や独自の憲法解釈を前提とした判断の非難は適法な理由に当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判官に裁判の公正を妨げる事情が認められないとした原決定に対し、最高裁判所に抗告を申し立てた。抗告人はその…
事件番号: 昭和28(ク)179 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告申立てが許容されている場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人等は、最高裁判所に対して抗告を申し立てた。当該申立ては、抗告申立書の記載自体から、民事訴訟法(旧法)413条に基づくものであることが明らかであった。 第…
事件番号: 昭和25(ク)106 / 裁判年月日: 昭和25年9月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては憲法違反の判断の不当を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、その抗告理由が、原決定における憲法適合性の判断の不当を指摘するもので…