判旨
裁判所の権限や審級の定めは原則として立法政策に委ねられており、最高裁判所への抗告権を訴訟法上特定の事由に限定する裁判所法7条2号等は、憲法32条、76条1項、77条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判所の権限や審級を法律によって定めることは、裁判を受ける権利(憲法32条)や司法権の帰属(同76条1項)、最高裁判所の規則制定権(同77条1項)との関係で合憲か。特に最高裁判所への抗告権を法律で制限することの是非が問題となる。
規範
いかなる裁判所において裁判を受けるべきかという裁判所の権限や審級等の事項は、憲法81条(違憲審査権)を除き、憲法上に制限規定はないため、原則として立法により定められるべき事項である。また、憲法32条は裁判所において裁判を受ける権利を保障するにとどまり、特定の審級構成を当然に保障するものではない。
重要事実
抗告人らは、最高裁判所の裁判権に関する規定である裁判所法7条2号が憲法76条1項および77条1項に違反して無効であると主張した。その上で、最高裁判所が特定の訴訟法上の規定(旧民事訴訟法419条の2)に該当する場合にのみ抗告を認める運用が、憲法32条の裁判を受ける権利を侵害するとして、原決定の憲法違反を訴えて抗告を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所が抗告に関して裁判権を持つ範囲を、裁判所法7条2号に基づき、訴訟法(民事事件においては民訴法)が特別に許容する場合に限定することは、立法府に与えられた裁量の範囲内である。憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利を保障しているが、それが直ちに特定の審級(最高裁への直接のアクセス等)を要求するものではない。したがって、立法により最高裁への抗告事由が限定されていることは、憲法の諸規定に抵触しない。
結論
裁判所法7条2号は憲法76条1項、77条1項に違反せず、また憲法32条にも違反しない。本件抗告は不適法であり、却下を免れない。
事件番号: 昭和24(ク)15 / 裁判年月日: 昭和24年7月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】憲法32条は国民が裁判所において裁判を受ける権利を保障するものであって、審級制度の内容を規定するものではない。したがって、特別の規定がある場合を除き最高裁判所への抗告を認めない裁判所法7条2号の規定は、憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、下級裁判所が下した決定に対し、最高裁判所へ…
実務上の射程
憲法32条の保障が審級の数や特定の審級構成(三審制など)を絶対的に保障するものではなく、立法政策に委ねられていることを示す重要判例。民事・刑事の審級制限の合憲性を論ずる際の基礎となる判例であり、違憲審査の対象とならない「立法裁量」の範囲を確定する文脈で活用すべきである。
事件番号: 昭和34(ク)151 / 裁判年月日: 昭和34年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条は裁判を受ける権利を保障するが、具体的な裁判所の権限や審級等の制度設計は立法府の裁量に委ねられており、最高裁判所への抗告が法律で制限されていても憲法に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、最高裁判所に対する抗告を制限する法運用は、裁判所法7条2号を空文化させ、憲法32条(裁判を受ける…
事件番号: 昭和33(ク)164 / 裁判年月日: 昭和33年7月10日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、旧民事訴訟法419条の2(現行336条)に規定する特別抗告の要件を満たさないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し、憲法違反を主張して最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、その抗告理由…
事件番号: 昭和34(ク)45 / 裁判年月日: 昭和34年4月1日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】憲法32条は裁判所において裁判を受ける権利を保障するが、裁判所の組織や審級等は立法政策の問題である。したがって、最高裁判所への抗告が認められるのは、法律により特に許容された場合に限られる。 第1 事案の概要:抗告人が原決定(詳細は判決文からは不明)を不服として、最高裁判所に対し抗告を申し立てた事案…
事件番号: 昭和41(ク)122 / 裁判年月日: 昭和41年4月6日 / 結論: 却下
原決定のいかなる点がいかなる理由で憲法に違反するのか具体的に主張のない特別抗告は、不適法である。