判旨
期限の定めのない債務について履行遅滞を理由とする契約解除を行うには、債権者による履行の催告が必要であり、催告なくしてなされた解除通知は無効である。また、訴訟の最終局面でなされた新たな主張が審理の著しい遅延を招く場合、裁判所はこれを時機に後れた攻撃防御方法として却下することができる。
問題の所在(論点)
1. 履行期限の定めのない債務において、催告なしに解除の意思表示をした場合、その解除は有効か。 2. 控訴審の最終口頭弁論期日に提出された新たな無効主張を、時機に後れたものとして却下することは許されるか。
規範
1. 履行期限の定めのない債務において、履行遅滞に基づく解除権を行使するためには、債権者が債務者に対し、相当の期間を定めて履行の催告をすることが必要である(民法541条、412条3項)。 2. 訴訟手続において、当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法は、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めるときは、裁判所は却下の決定をすることができる(民事訴訟法157条1項、旧法139条)。
重要事実
上告人(売主)と被上告人(買主)との間で本件建物の売買契約が締結された。履行期日について当初の合意(昭和21年11月6日)は延期され、その後の具体的な期日については確たる取極めがない状態(無期限)となった。上告人は、同年11月13日に登記手続の履行を誓ったが、わずか3日後の同月16日、催告をすることなく突如として被上告人の不履行を理由に契約解除を通告した。また、上告人は控訴審の最終口頭弁論期日になって初めて要素の錯誤による無効を主張した。
あてはめ
1. 本件売買契約は履行期日の延期後、期限の定めのない債務となっていた。この場合、履行を促す催告が必要であるところ、上告人は催告を行うことなく解除を通告している。短期間での意思の豹変はあり得るとしても、適法な催告を欠く以上、履行遅滞による解除の効力は生じない。 2. 要素の錯誤の主張については、控訴審の最終期日に初めて提出されたものであり、これを認めれば新たな証拠調べが必要となり、訴訟の完結を遅延させることは明らかである。したがって、受訴裁判所がこれを却下した判断は正当である。
結論
1. 期限の定めのない債務の不履行を理由とする解除には催告が必要であり、催告を欠く本件解除は認められない。 2. 最終期日の新たな主張却下は適法であり、上告を棄却する。
事件番号: 昭和23(オ)118 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】履行遅滞による解除権の発生には、相当期間を定めた催告が必要であり、当事者の合意によって定められた当初の確定履行期を徒過したとしても、直ちに解除権が発生するわけではない。また、無催告解除の特約が認められない限り、債務者の履行遅滞のみをもって直ちに契約を解除することはできない。 第1 事案の概要:売主…
実務上の射程
期限の定めのない債務における催告の必要性を確認する基本判例である。答案上は、解除の要件(催告の有無)を検討する際の根拠として用いる。また、民事訴訟法上の「時機に後れた攻撃防御方法」の該当性判断において、最終期日の新主張かつ新証拠を要する事態が「遅延」に直結することを示す好例として活用できる。
事件番号: 昭和23(オ)117 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】双務契約において、相手方の代金支払義務の不履行を理由とする履行遅滞の効果を主張するには、自己の負担する反対債務(所有権移転登記義務等)につき、適法な履行の提供を完了していることが必要である。 第1 事案の概要:売主である上告人と買主である被上告人は、山林の売買契約を締結し、残代金4万5000円の支…
事件番号: 昭和27(オ)248 / 裁判年月日: 昭和29年12月21日 / 結論: 棄却
債務者が遅滞に陥つたときは、債権者は、期間を定めずに催告した場合でも、催告の時から相当の期間を経過すれば、契約を解除できるものと解すべきである。
事件番号: 昭和24(オ)49 / 裁判年月日: 昭和24年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】既判力の標準時は口頭弁論終結時であり、終結時点で被告が所有者であれば、その後の目的物喪失は判決の正当性に影響せず、履行不能による執行の問題にとどまる。 第1 事案の概要:上告人(被告)から被上告人(原告)への土地所有権移転登記手続を命じる訴訟において、原審の最終口頭弁論期日は昭和23年9月13日で…
事件番号: 昭和24(オ)113 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同時履行の関係に立つ債務において、相手方を履行遅滞に陥らせて契約を解除するには、自己の債務の履行を提供した上で催告することを要し、履行の提供を伴わない解除は効力を有しない。 第1 事案の概要:不動産の売主(上告人)と買主(被上告人)との間で本件売買契約が締結された。本件契約において、買主の残代金支…