判旨
賃貸借契約において、賃貸人が契約期間満了を主張して明渡しを求めている最中であっても、賃借人が賃料支払義務を免れるわけではなく、催告解除権の行使が直ちに権利濫用となることはない。
問題の所在(論点)
賃貸人が期間満了を主張して明渡しを求めている場合に、賃借人は賃料延滞の責任を負うか。また、そのような状況下で賃貸人がなした催告解除は権利濫用となるか。
規範
賃貸借契約の存続について当事者間に争いがあり、賃貸人が期間満了等を理由に明渡しを請求している状況下であっても、賃借人が現に目的物を占有・使用し得る状態にある限り、賃料支払義務は存続する。かかる状況下での不払を理由とする解除権の行使は、特段の事情がない限り、信義則に反する権利濫用(民法1条3項)には当たらない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、昭和22年10月分から昭和23年8月分までの延滞賃料の支払を催告したが、履行がなかったため賃貸借契約を解除した。賃借人は、当時賃貸人から期間満了を理由とする明渡請求を受けていたため、賃料不払について責任がなく、訴訟の最終段階での解除権行使は権利濫用であると主張した。また、後に空き家放置を理由とする立入禁止の仮処分を受けたことも権利濫用の根拠として主張した。
あてはめ
賃貸人が期間満了を主張していたとしても、賃料延滞の事実は存在し、賃借人はその履行責任を免れない。また、本件における立入禁止の仮処分は、賃借人が物件を空き家として放置し不用心であったことを理由になされたものであり、賃貸人の責めに帰すべき事由による使用不能とはいえない。したがって、長期間の賃料不払に基づきなされた本件解除権の行使を権利濫用と認めるべき事情は存在しない。
結論
賃料延滞に基づく解除は適法であり、権利濫用の抗弁は認められない。
実務上の射程
賃貸人が契約の終了を主張している場面(更新拒絶時など)であっても、賃借人が居住を続ける以上は賃料支払義務を負うことを示す。債務不履行解除の場面で賃借人側からなされる「信義則違反・権利濫用」の抗弁を封じる際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)99 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除が権利の濫用に該当するか否かは、賃料受領拒絶や立退要求等の事実のみをもって直ちに判断されるものではなく、諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)が賃貸借契約を解除した事案において、上告人(賃借人)側は、被上告人による賃料受領の拒絶や、不当な立退…