家賃が一躍二六倍に値上げされた場合であつても、該値上額が第一審判決によつて正当と判断された後、賃借人が値上額の家賃の支払催告に応じなかつたときは、それを理由とする賃貸人の契約解除は有効である。
家賃が一躍二六倍に値上げされた場合と値上げされた家賃の不払を理由とする契約解除の適否
借家法7条,民法541条
判旨
賃貸借契約において、賃借人の不誠実な行動が信義則に反する場合、催告期間内に延滞賃料を支払わなかったことについて履行遅滞の責を免れず、契約解除が有効となる。
問題の所在(論点)
賃料不払いに基づく契約解除において、履行遅滞の成立に債務者の故意・過失に関する明示的な判示が必要か、また信義則が遅滞の責任の有無にどのように影響するか。
規範
債務者が履行遅滞の責を免れるためには、特段の事情がない限り、債務者に故意・過失がないことが必要であるが、債務者の行動が信義則に反すると認められる場合には、遅滞の責を免れることはできず、催告期間の経過により解除の効力が発生する。
重要事実
賃借人(上告人)は賃料を不払いとしていたところ、賃貸人から催告を受けたが、催告期間内に延滞賃料を支払わなかった。上告人は、履行遅滞につき故意・過失がある旨の判示がないことや、遅滞の責任がないことを主張して、賃貸借契約の解除(昭和31年10月5日終了)を争った。
あてはめ
原審の確定した事実関係によれば、上告人の行動は信義に反するものであった。このような状況下では、催告期間内に延滞賃料を支払わなかったことについて、上告人は遅滞の責を免れることができない。したがって、特段に故意・過失の存在を判示せずとも、履行遅滞に基づく解除の成立を認めることができる。
結論
本件賃貸借契約は、催告期間の満了により適法に解除されたものと認められ、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
賃料不払いにおける履行遅滞の帰責事由について、信義則の観点から判断した事例である。実務上は、単なる支払遅延だけでなく、賃借人側の不誠実な対応が顕著な場合に、解除の有効性を補強する理屈として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)611 / 裁判年月日: 昭和41年1月14日 / 結論: 棄却
賃貸借契約が賃料不払のため適法に解除された以上、たとえその後賃借人の相殺の意思表示により右賃料債務が遡つて消滅しても、解除の効力に影響はない。