判旨
売買契約において、残代金支払義務の履行を猶予するに際し、再度定めた支払期日に支払がないときは催告を要せず直ちに契約を解除できる旨の特約(無催告解除条項)は有効であり、当該期日の経過によって解除権が発生する。
問題の所在(論点)
履行遅滞を理由とする契約解除において、催告を不要とする無催告解除条項の効力、および当該条項に基づく解除が認められるための要件が問題となる。
規範
売買契約における代金支払債務の履行について、債権者が履行期を猶予する際、新たな履行期までに支払がないときは催告を要することなく直ちに契約を解除できる旨の合意(無催告解除の特約)をした場合、当該特約は公序良俗等に反しない限り有効であり、債務者が期日に履行を怠れば、催告なしに解除の意思表示を行うことで契約を解消し得る。
重要事実
買主(上告人)は売主Dから家屋を買い受けたが、残代金の支払を遅延した。昭和20年12月6日、Dは支払を翌年5月末日まで猶予する代わり、当該期日に支払がないときは催告を要せず直ちに契約を解除できる旨を約し、上告人もこれに同意した。また、上告人は無断で本件家屋に居住していた経緯から、解除の際には即時に立ち退くことも誓約した。その後、上告人は猶予された期日にも代金を支払わなかったため、Dは同年7月5日に解除の意思表示を行い、翌日到達した。
あてはめ
本件では、当初の支払遅滞を受けてDが支払を猶予する際、明確に「改めて催告するまでもなく直ちに解除できる」旨の約定が成立している。上告人はこの猶予の謝礼として一部を内払し、特約の存在を前提に行動していたといえる。上告人が猶予された期日を徒過した事実は、合意された解除事由に該当する。したがって、Dが昭和21年7月5日に発した解除の意思表示は、特約に基づき有効なものと評価される。
結論
無催告解除の特約に基づき、履行期日の徒過をもって催告なしに行われた解除の意思表示は有効であり、本件売買契約は適法に解除された。
実務上の射程
本判決は、無催告解除条項の有効性を前提に、事実認定に基づく判断を示したものである。答案上は、民法541条の原則(催告解除)の例外として、特約がある場合の処理を説明する際に活用できる。ただし、現代の判例実務(最判昭和43年2月23日等)では、無催告解除条項があっても「信義則に反するような特段の事情」がある場合には解除が制限される法理が確立しているため、本判決を引く際も、不合理な結果が生じないかという観点からの補足検討が望ましい。
事件番号: 昭和42(オ)1104 / 裁判年月日: 昭和43年11月21日 / 結論: 棄却
家屋賃貸借契約において、一箇月分の賃料の遅滞を理由に催告なしで契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効と解するのが相当である。