判旨
前訴で確定した所有権確認判決の既判力は、その原因となった売買契約の無効を主張して所有権を争う後訴にも及ぶ。そのため、前訴の事実審口頭弁論終結前に存在した無効事由(強行法規違反・錯誤・認可欠缺等)を後訴で主張することは、既判力の遮断効により許されない。
問題の所在(論点)
前訴で所有権の存在が確定した後に、前訴の口頭弁論終結前に存在した売買契約の無効事由(錯誤等)を主張して、当該契約の無効確認や所有権に基づく請求をすることが、前訴既判力の遮断効に触れ許されないか。
規範
確定判決は、訴訟物たる権利関係の存否につき既判力を生じる。既判力の遮断効により、当事者は前訴の事実審口頭弁論終結時までに提出できた攻撃防御方法を、後訴において提出して前訴判決と矛盾する主張をすることはできない。また、契約の無効確認請求であっても、その実質が既判力の生じた所有権の帰属を争うものである限り、既判力に抵触する。
重要事実
被上告人らが上告人を被告として本件物件の所有権確認等を求めた前訴において、被上告人勝訴の判決が確定した(事実審口頭弁論終結日は昭和19年8月29日)。その後、上告人は本訴を提起し、前訴の請求原因であった売買契約が強行法規違反、要素の錯誤、行政官庁の認可欠缺により無効であると主張して、当該売買契約の無効確認および所有権に基づく登記抹消・物件引渡を求めた。
あてはめ
本件で上告人が主張する売買契約の無効事由(強行法規違反、錯誤、認可欠缺)は、いずれも前訴の事実審口頭弁論終結前に存在し、かつ提出可能であったものである。また、上告人が求める売買契約の無効確認請求は、実質的には契約が無効であることを理由に所有権が自己にあることの確認を求める趣旨にほかならない。そうすると、これらの主張はいずれも前訴で確定した「被上告人らに所有権がある」という判断と矛盾抵触するものであり、既判力の遮断効によって主張自体が封じられるといえる。
結論
本訴は前訴の既判力に抵触するため、上告人の請求は認められない。上告棄却。
実務上の射程
既判力の遮断効(攻撃防御方法の提出制限)の基本判例である。前訴訴訟物(所有権)の発生原因事実を否定する主張が、後訴において確認請求の形式をとっていたとしても、実質的に前訴の判断を蒸し返すものであれば既判力に抵触することを示す。答案では、理由中の「事実審の最終口頭弁論期日以前の事由」という基準を用いて、後訴の主張が遮断されるか否かを検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和24(オ)17 / 裁判年月日: 昭和24年5月21日 / 結論: 棄却
一 控訴状に貼付すべき印紙が不足していたとしても、その後その不足額の印紙が増貼された場合には、右補正前になされた弁論期日判決言渡期日の各指定及びその告知は、すべて有効である。 二 約一反歩の他人の宅地を数年来耕作してきた場合であつても、その宅地は所有者が後日自己の住家を建築するつもりで何人にも賃貸せず空地として残してお…
事件番号: 昭和33(オ)609 / 裁判年月日: 昭和35年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本訴において所有権取得の経過的事実として主張され相手方が認めた事実は、反訴における占有権原として当然に主張されたものとはみなされない。占有権原の抗弁について格別の主張・立証がない限り、弁論主義に反することなく明渡請求を認容できる。 第1 事案の概要:上告人(本訴原告・反訴被告)は、被上告人(本訴被…
事件番号: 昭和36(オ)1090 / 裁判年月日: 昭和38年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停による合意において、訴訟終了の合意と新たな売買契約が併存する場合、当事者が売買契約の解除が訴訟終了の効果に影響を及ぼさない趣旨で合意したときは、売買契約の不履行により解除されても訴訟終了の効果は維持される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人は、土地所有権をめぐる訴訟において調停を成立させた。…
事件番号: 昭和25(オ)365 / 裁判年月日: 昭和28年5月8日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条ノ二に基く地方長官の許可を得ない農地の売買契約であつても、それが農地を耕作の目的に供するためになされ、かつ昭和二一年一〇月二一日法律第四二号をもつて改正された農地調整法施行当時すでに農地の引渡またはその所有権移転登記のいずれかが完了している場合には、その売買契約は有効である。