売買を請求原因とする所有権確認の判決が確定したのちは、後訴において詐欺を理由に右売買を取り消して所有権の存否を争うことは許されない。
売買を請求原因とする所有権確認の判決が確定したのち後訴において詐欺を理由に右売買を取り消して所有権の存否を争うことの許否
民法96条,民法121条,民訴法199条
判旨
売買契約に基づく所有権確認訴訟において、事実審の口頭弁論終結前に詐欺による取消権を行使できたにもかかわらず、これを行使せずに請求認容判決が確定した場合、その後の訴訟で当該取消権を行使して所有権の存否を争うことは既判力により許されない。
問題の所在(論点)
事実審の口頭弁論終結前に発生していた詐欺による取消権を、請求認容判決の確定後に行使し、当該判決により確定した所有権の存否を争うことが既判力(民事訴訟法114条1項)に抵触し、遮断されるか。
規範
前訴の確定判決によって確定された権利関係の存否を後訴で争うことは既判力により禁止される。形成権の行使が既判力によって遮断されるか否かは、当該権利の行使が前訴の訴訟物である権利関係を否定する攻撃防御方法の提出に準ずるかにより判断される。売買契約に基づく所有権確認請求を認容する判決が確定した場合、その売買契約の瑕疵を主張して所有権を否定することは、前訴判決の内容と矛盾する関係に立つため、基準時前に行使可能であった取消権の主張は既判力により遮断される。
重要事実
被上告人(原告)が上告人(被告)から本件土地を買い受けたとして所有権確認を求めた前訴において、請求認容判決が下され確定した。しかし、上告人は当該判決確定後、前訴の売買契約は詐欺によるものであるとして、取消権を行使したと主張した。これに基づき、上告人は本訴において、本件土地の所有権の存否を改めて争おうとした。
事件番号: 昭和24(オ)275 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前訴で確定した所有権確認判決の既判力は、その原因となった売買契約の無効を主張して所有権を争う後訴にも及ぶ。そのため、前訴の事実審口頭弁論終結前に存在した無効事由(強行法規違反・錯誤・認可欠缺等)を後訴で主張することは、既判力の遮断効により許されない。 第1 事案の概要:被上告人らが上告人を被告とし…
あてはめ
本件において、上告人は前訴(所有権確認訴訟)の事実審口頭弁論終結時までに、売買契約の詐欺を理由とする取消権を行使し、その効果を主張することが可能であった。前訴の確定判決は、当該売買契約により被上告人が所有権を取得したことを公に確定したものである。上告人が主張する取消権の行使は、前訴で確定した所有権の存否を根底から覆すものであり、前訴確定判決の既判力の基準時において行使可能であった攻撃防御方法を後出しするものといえる。したがって、上告人の主張は前訴確定判決の既判力に抵触する。
結論
前訴判決の確定後に詐欺による取消権を行使して所有権の存否を争うことは、既判力に抵触し許されない。したがって、上告人の主張は棄却される。
実務上の射程
既判力の遮断効(標準時後の形成権行使)に関するリーディングケースである。建物買取請求権や相殺権とは異なり、詐欺・錯誤等の取消・無効主張は、前訴の権利関係そのものを否定する性質が強いため、原則として遮断される。司法試験では「遮断効の範囲」が問われた際、本判例をベースに、当該形成権の行使が前訴判決の内容を実質的に蒸し返すものといえるかを論じる際に用いる。
事件番号: 昭和25(オ)263 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買において、代金支払が登記手続に先行する特約があり、かつ不払の場合に無催告解除をなし得る旨の合意がある場合、約定期限までに履行場所で代金の提供がなければ、特約に基づく無催告解除は有効である。 第1 事案の概要:買主(上告人)は売主(訴外会社)との間で土地の売買契約を締結したが、手付金を支払…
事件番号: 平成22(受)285 / 裁判年月日: 平成23年6月3日 / 結論: 棄却
表題部所有者の登記も所有権の登記もない土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えは,次の(1)〜(3)の事情の下では,確認の利益を欠く。 (1) 国は,当該土地が国の所有に属していないことを自認している。 (2) 国…
事件番号: 昭和42(オ)495 / 裁判年月日: 昭和42年11月10日 / 結論: 棄却
農地法第三条または第五条にもとづく知事の許可は、農地法の立法目的に照らして、当該農地の所有権の移転等につき、その権利の取得者が農地法上の適格性を有するか否かの点のみを判断して決定すべきであり、それ以上に、その所有権の移転等の私法上の効力やそれによる犯罪の成否等の点についてまで判断してなすべきではない、と解するのが相当で…